工藤勇一校長先生のお話

2018年9月28日
千代田区立麹町中学校見学
工藤勇一校長先生のお話


●今年度からの大きな変更点
・定期考査・宿題の廃止
→単元テスト、実力テスト
再テスト制
※回数は増えている。毎週何かのテストがある。


・固定担任制の廃止
→全員担任制(チーム教育)
非常勤を入れて8人皆で持つ。
※ローテーションはしない。会議をして、対応できる人が入る。
面談も、生徒が自分で選べる。誰かに集中すると思ったが、そうならなかった。
※クレームが減った。例えば、新採がもったクラスが荒れると、その先生のせいになってしまいがち。でも、そうならない。担任がいるとクラス間で比較・競争が起こる。担任がいないと、比較・競争は起きない。


・AI(人工知能)による数学指導
※キュビナというソフト。上位を除いた全員の生徒にiPadを配って、教員は何も教えず、勝手に学んでいく。小学校1年生まで戻れるしくみ。コンパスという会社が開発。子どもたちも、教員の授業よりこの方がいいと言っている。ずっと思考し続けている。
https://qubena.com/


・生徒会主催私服登校期間設定
※服装や頭髪の指導は全くしていない。
夏休み明けに茶髪の生徒がいたが、教員も生徒も気にしない。だから指導対象にならない。


【学校教育の在り方を本質から見直す】
1、学校は何のためにあるのか
2、目的が大切!
3、目的の合意形成ができるかが勝負!
4、麹町中メソッド
※小学校の保護者にも、文科大臣にも同じスライドで同じ話をする。これが大事。


●学校の目的
人が社会の中でよりよく生きていける。
よりよい社会をつくる。
カリキュラムをこなすことが目的になってしまっていることが問題。


●学校の機能で注目すべき点
カリキュラム
学び方(教え方)
※寺子屋をイメージするとよい。一人で学ぶ。わからないことは周りに聞く。一斉教授型の学びはなかった。


●学校のあるべき姿
1、現代にマッチしたカリキュラム
2、双方向型の学び
※漢字は本当にあんなに覚えなければいけないのか?


●手段が目的化してはいけない
自律した生徒を育成する
→基礎学力をつけさせる
→つまづいたところを繰り返させる


つまづいたところを繰り返させると学力は上がるけれど、生徒は自律しない。
手段にこだわると、上位の目的が達成されなくなる。
どこかの手段にこだわってしまう。
すると、全体像が見えなくなる。最上位の目的を見失う。


※運動会の目的は?
協力・団結のため?
一見よさそうに見えるが、組体操などの手段にこだわり、運動会前に不登校になる生徒もでてくることも。
運動会の最上位の目的って、運動を楽しむことではないのか?


●手段の目的化の例
・宿題やノート点検ばかり
※振り返らないノートなどとらなければいい。「人のためにとるノート」は非効率


・他者意識のない作文を書かせる
※読書感想文は誰のため?何のため?
※フィンランドの教科書にある「旅行記の書き方」では「読み手に伝える」ことが意識されている。この意識が日本の作文には足りない。


・節目節目で目標を書かせ掲示する。
※遅刻しない、忘れ物をしない、というような目標に何の意味があるのか?


・行動よりも心の教育が重視される。
※「心」がわかるということは難しい。「行動」を見るべき。「良い行動」のために「心」が必要なはず。


・他者のない班新聞をつくり、協力することが目的となっている。
※誰が読むのか?


・リーダー指導といいながらフォロワー指導ばかりに力が入る。
※本当はリーダーに「人は動かないのが当たり前」ということを伝え、戦略を考えさせるべき。


●第3学年ツアー企画取材旅行
JTBにツアー企画を提案する
25時間程度
※修学旅行では、最上位の目的が「時間を守れ」となりがち。それは、修学旅行の本来の目的なのか?


JTBから「旅行って素敵だ!」というプレゼンをしてもらう。
さらに出前授業で取材のコツを学ぶ。
その後、ツアー企画を検討し、旅行そのものは「現地取材」の位置付け
旅行後、出前授業で、パンフの作り方などを学ぶ。


目的と他者を意識してこそ学びが深まる!
※「アクティブラーニング」とか「主体的・対話的で深い学び」とかの言葉はいらない。目的と他者を意識すればよい。


●麹町中の挑戦
目的と手段の視点から見直し、形骸化した教育活動をスクラップし続けている。
その上に、社会とシームレスな教育の再構築を目指している。
※授業は普通の授業だけれど、それ以外の行事等はほぼ総とっかえした。


●体育祭
「みんなが楽しめる体育祭」というミッション
※「全員リレー」が必要かを生徒が議論して廃止した。


●文化祭
「みんなを楽しませる文化祭」というミッション
※出し物を、生徒がオーディションをしたりしている。


●宿題の在り方
宿題は間違ったところが大事。
でも、宿題が大量にあると、「わからないところを飛ばす」というやり方をする。
そうすると、「ものすごく時間をかけているのに、やる前と何も変わっていない」状況を生んでいる。
本当は、「学習時間を減らして学力を上げる」方法を考えなければいけない。


藤井聡太
「授業内容は理解しているのに、なぜ宿題を出さなければならないのか?」


●わからないものをわかるようにするには?
「聞く・調べる」と「繰り返し」とが必要。
でも、それがどのくらいどのように必要かは人によって異なる。
でも、例えば、とにかく繰り返しを強要してしまっている。
その生徒の得意な繰り返し方になっているか?読むのが得意で書くのが苦手な子に読むのを繰り返させていたら効率が悪いのではないか?
学習計画表を提出させるのは最悪。それを提出するのが目的になってしまう。
手帳を買わせているがチェックはしない。
手をかければかけるほど生徒は自律できなくなり、自分がうまくいかないことを誰かのせいにするようになる。


●麹町中の最上位目標
すべての子どもが
「世の中ってまんざらでもない!」
「大人って結構素敵だ!」
と思えるようにしたい


●麹町中の目指す生徒像(コンピテンシー)
1、様々な場面で言葉や技能を使いこなす
2、信頼できる知識や情報を収集し、有効に活用する
3、感情をコントロールする
4、見通しをもって計画的に行動する
5、ルールを踏まえて建設的に主張する
6、他者の立場で物事を考える
7、目標を達成するために他者と協働する
8、意見の対立や理解の相違を解決する
※これを生徒が意識すると、例えばイライラしても「今、感情をコントロールできてない」ということがメタ認知できるようになる。メタ認知をして成長するためのチェックリストになる。
※「達成できない目標を立てる」ことが普通になってしまっている。例えば「団結して優勝」としたら。優勝したチーム以外は目標達成できない。


●ノートのフレームワーク
見出し
内容メモ
気付き・疑問
まとめ(3ポイント)


●感情のコントロール
みな違っている。それは悪いことではない。
色々な意見を出すべし。
すると、対立が起こる。
対立は悪いことではない。対立が嫌なのは感情のコントロールができないから。
ブレストやKJ法は、「感情をコントロールする方法」として位置付けるとよいのではないか。
ブレストをしないと、色々な意見を吸い上げられない。


青砥端人さん
UCLA出身の脳科学者
一年間教員研修をしてもらっている。
https://www.huffingtonpost.jp/…/dancinf-einstein_a_23491235/
http://techlabpaak.com/members_project/mizuto_aoto


「不幸にならない」ことが大事。全否定することはない。


学校の施設が立派でも稼働率が低い。
これからに向けてのアイデア
学校を「小さな学校」にする。
14時くらいで学校を終えてしまう。
14時から22時までを民間のために使ってしまえばいいのではないか?
それで貸し出してお金を稼ぐ。
最初の時間帯は生徒優先で使わせる。
人材育成や組織論は、今は民間がやっているイメージだが、昔は学校の先生がやっていた。それを民間企業が学んでいた。
なぜ工藤校長が人材育成や組織論ができるか。すべては生徒に学んだ。
★他の学校にどうやって広げるのか?
無理して拡げようとしていないし、誰がどう思おうと気にしない。
「成果」ではなく、自分としてベストを尽くしたかが大事だし、生徒にもそのことを伝えたい。