植物の生き方(朽津先生講演メモ)

都生研総会講演会
植物の生き方を学び、活かす?環境・食糧・エネルギー問題の基盤として?
朽津和幸先生(東京理科大学)
メモ


●三位一体
最先端研究、教育・人材育成、社会貢献
これらは、三位一体であり、不可分である。


●大学入試
日本では、大学入試で生物を使うのは文系の学生の方が多い。
それは「暗記物」になってしまっている。


●貝沼喜兵先生
世界で初めて高校生向けに遺伝子組換え実験を教材化。


●顕微鏡
形態観察の道具から、機能的な情報を得る道具へ


日本バイオイメージング学会
学会誌が無料公開されている。
https://sites.google.com/site/bioimagingmag/

 

●世界の人口
http://www.census.gov/popclock/


●植物科学は世界の平和に貢献する
植物学は、ノーベル賞の科学分野に該当しないが、平和賞はもらうことができる。
 政治家だけではなく、植物学者もノーベル平和賞をもらえる。


●植物学の立ち位置
食糧・環境・エネルギーに、植物学はアプローチできる。


●サイエンスマップ2012
http://www.nistep.go.jp/…/science-and-technology…/sciencemap
日本は「植物学」は成果が上がっている明らかなホットスポット。


●統合化
ある生物で解明された成果は、他の生物の研究に生かすことが可能。


●生命の歴史と多様性
ノリとワカメは全く別の系統。
ヒトと菌類の方がずっと近い。
※光合成生物でも、「真核生物が真核生物に共生」するという二次共生が起きたものは、色々なところに散っている。


●ゲノム解読と生物の理解
ゲノム=文字列
遺伝子=単語(部品)
生命の高次機能=文法
→システム生物学


これまでの単純なセントラルドグマではなく、RNAを介したRNAの分解制御や、特異的なタンパク質の分解制御などがあり、量的な制御がされている。


●iGEM
合成生物学。
 遺伝子組換えをドンドンやってとにかく新しい生物を作ろうとしている。
http://chem.tf.chiba-u.jp/igem/igem/igem1.html


●クリプトクロム
植物の屈光性等を制御する青色光受容体。
これを動物で調べると、色々な動物で見つかった。
脳の視交叉上核で発現。体内時計を制御。
植物学がダイレクトに医学につながった例。


●植物状態
環境を感知し応答することができない状態。
でも、「植物は植物状態で生きている?」
植物は、植物状態から最も遠い存在といえるのでは??


●大豆の気持ちになってみよう
いつ発芽したらよい?
水分がない時に発芽したら?低温状態で発芽したら?
※種子の水分感知センサーや温度感知センサーのしくみについては、近年研究が進んでいるが、まだ解明されているわけではない。


※もやしも光が当たれば葉をつくる。緑化。種子だけではなく、もやしも光感知している。


●分裂せずに成長できるしくみ
「水ぶくれ」で成長できる。
伸長するときには、材料を細胞骨格で運び、先端でエキソサイトーシスを起こして伸長していく。先端成長。


●植物の嗅覚
虫が植物をかじると、臭い分子を出し、天敵を呼ぶ。
エチレン以外の分子についても研究が進んできた。
多種多様な揮発性シグナル分子。


●植物の免疫
敵を見分ける。
病原菌を道連れにした自律的な細胞死、抗菌性物質、細胞壁の変化が3大対応。
味方とわかると共生。菌根菌。


ニトロゲナーゼは、酸素があると働けない。だから、根粒でヘモグロビンを作り、酸素の少ない部屋を用意してあげる。


感染防御→菌根菌共生→根粒菌共生
という進化の流れ


●ネット上の教材
http://www.plantcell.org/site/teachingtools/
http://www.plantcell.org/site/teachingtools/TTPB26.xhtml


●植物は「動けない」のではなく、「動かない」道を選び取って地上に大繁栄した。
動かない代わりに、多様な環境変化を察知し応答。


●植物の情報処理
植物には脳がないので、情報を分散処理。
植物の情報処理システムはどうなっているか?
分散制御でどのようにシステム全体の秩序を維持しているのか?
※植物も情報処理にイオンチャネルを使っていて、活動電位に似た反応が見られる。


●アイルランドの飢饉
1845年、アイルランドで大飢饉。
同じ種類のジャガイモだけを植えたので、それが病気でやられたことが原因。
世界史上の大事件。
世界史にはこういうのが出てくるのに、生物には出てきていなかった。


●植物生産の阻害要因
病原菌、昆虫、雑草が同じくらい。
人間はウイルス病が多く、真核生物病は少ないが、植物の病気の8割は真核生物が原因。だから殺菌剤が難しい。


●植物の抗菌性物質
植物は、種ごとに異なる代謝系を発達させ、外的から防御する潜在能力を持つ。
植物は二次代謝をすごく発達させる。
※ニコチンは、タバコのつくる動物に対する毒素の例。


※化粧品業界、植物のつくる物質がすごく化粧品にとっていいものがあった。


一つの葉に感染すると、他の葉にも情報が飛んでいく。
過敏感反応→全身獲得抵抗性


●植物の気持ちになり、植物の力を生かす
植物は植物の立場で多種多様な物質をつくる。
※薬学部の学生「植物が何のためにこんな生薬をつくるのか、なんて考えてみたこともなかった」
それを生かすには?


陸上植物は、基本的にはナトリウムはほとんど使わない。
基本的にはナトリウムチャネルはない。
カルシウムチャネルと陰イオンチャネルが非常に重要。
気孔の開閉もこのしくみが使われている。


●?孔辺細胞のもつセンサー
二酸化炭素、光、病原菌、温度、乾燥などに関するセンサーを一個の細胞が持っていて、気孔の開閉が制御されている。


情報処理では、活性酸素とカルシウムイオンが重要。


●活性酸素
酸素呼吸のしくみと活性酸素の発生は不可分。


植物の光合成は"危険"。
酸素をゴミとして捨てながら電子伝達を行う。
当然、活性酸素は大量にできる。
だから、植物はビタミンCを大量にもつ。


※カルビン回路と言ってはいけない。ベンソンがやった仕事に対してカルビンにだけノーベル賞をあげたのは大きな間違いだったと言っている。


●活性酸素
根毛が伸びなくなる変異体。
原因遺伝子が活性酸素関係のものだった。
分裂せずに一方向に先端成長するときに活性酸素が重要ということわかった。


根毛も花粉管も、積極的に活性酸素をつくっているということがわかった。
しかも、これはカルシウムイオンによって制御されている。


●細胞壁のかたさの制御と活性酸素


●ゼニゴケの研究進展


●活性酸素は「悪魔」ではなく「諸刃の剣」
適正量を積極的に生産することも必要。


●植物免疫活性化剤


●ダイナミックな液胞
液胞は「内なる外界」。
液胞はもともとリソソーム。
そこの体積を大きくすることで水ぶくれできるようになった。
しかもかなりダイナミックに形も変わる。
液胞の制御はアクチン繊維。


液胞の中身はリソソームならば、それが壊れれば細胞死につながる=液胞は時限爆弾


●オートファジー
イネのオートファジー変異体
花粉が未成熟で稔らない。
なぜオートファジーの異常で不稔になるのか?
花粉成熟の過程で起こるプログラム細胞死がうまくいかなくなっているらしい。


●細胞壁
かたさ可変の鉄筋コンクリート


ペクチンはコンクリート→かたさ可変
セルロースは鉄筋


かたいプラスチックとは?
共有結合が増えるとかたくなる。
植物はこれを酵素で行っている。
こういう風に理解するとよい。


●電気の話
明治時代に電気が入ってくるときに、感電を恐れて「危険だから導入すべきでない」という議論があった。


●新しい育種技術
NPBT
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140826.pdf