ソフト(問い)とハード(学び合い)

先日、授業見学に来ていただいた東京大学大学院教育学研究科修士課程の大道さんからいただいたメモと、それに対しての僕からの返信コメントです。


<いただいたメモ>
先日は授業を見学させていただき、ありがとうございました。
今後の参考にさせていただくという目的はもちろんありましたが、それとは別に純粋に楽しませていただき、「学びとは本来は面白いことなのだ!」と改めて実感しました。


さて、大野先生の実践は、いわゆる「学び合い」という授業形態が特徴なのだと思います。
しかし私はむしろ、先生がプリントで出題なさっている「問い」の質こそが優れているのだと感じ、そこに注目しておりました。


優れていると感じたのは、具体的には以下の点です。
・生徒の日々の生活と関連した問いである点。
・多様な解答やプロセスが許容され、いわゆる「優秀な生徒」以外も積極的に参加できる点。
・とはいえ好き勝手に議論してよいわけではなく、あくまで教科の基礎知識を活用して考える問いである点。
こうした要素が、問い、さらには授業全体を取り組み甲斐のあるものにしているのだと思いました。


アクティブラーニングが称揚される中で、「学び合い」をはじめとしたさまざまな授業形態が提案されています。
しかしそれらは言わばハードウェアであり、ソフトウェアにあたる深い思考や理解を促す問いが優れていなければ、ハードウェアは無用の長物となってしまうでしょう。(一方で、ソフトウェアをどれだけ活用できるかは、ハードウェアに依存するといえます。)


先日とある小学校でICTを用いた実践を拝見したのですが、正直なところタブレット端末を使っているというだけで、内実は今までと何ら変わりがありませんでした。むしろ、タブレット端末の使用が、授業をもたつかせているようにも感じました。
このように授業形態ばかりを注目する実践が多い中で、大野先生の授業は、優れたソフト(問い)を「学び合い」というハードでフルに駆動させており、私にとってはひとつの理想形でした。


昨今の「アクティブラーニング・ブーム」自体の是非はともかくとしても、私はこれをチャンスだと思っています。これほど全国的に、(とくに高校で)授業を根本から見直そうという動きが活発になっている状況は、なかなかなかったのではないでしょうか。大野先生の実践が、そうした状況をますます刺激することを、私は願っております。


<返信コメント>
●優れたソフト(問い)について
ハードウェアとソフトウェアの話、なるほどと思いました。
補足するとすれば、この授業の先に目指すのは、「問を教員が与える」のではなく、「問を生徒自身が創造し解決していく」ような展開です。
「面白い問」が与えられることに慣れてしまうと、学習活動はその時は活発になるかもしれませんが、
その後の人生においては、「課題発見」が自分ででき、かつ「課題解決」へのサイクルを回すことができることがより重要です。
ですから、あのようなプリントを使わない方向に一年間かけて仕掛けていきたいと思っています。