課題発見・解決の「場」をつくる

高校生には、「広い世界」を見てほしいと思っています。
例えば、部活動。
打ち込めば打ち込むほどにGRITなど非認知能力が高まるというメリットもありますが、できればそれ以外の色々な世界に触れてほしいと思っています。


そんなことを形にする手段として「自主ゼミ」を生徒に呼びかけました。
「なんでもいいから何かやってみたい」という生徒を募って、昼休みもしくは放課後に活動するというものです。
昨年度も呼び掛けてみて、希望者は集まったのですが、具体的な動きにまで発展させることができませんでした。
都立での残り時間が少ない中で、それは大きな心残りで、最後に「自主ゼミ」のような活動をどんなに小規模でもいいからやってみたいと思いました。
そして、授業で計120名に呼び掛けて、2名の生徒が参加表明をしてくれました。
1名はフィールドでの活動の希望者、もう1名は「なんでもいいから何かやってみたい」ということでした。
フィールドでの活動の希望者とは、野鳥の観察会や他のイベントにも一緒に行き、今後も色々広がりそうです。


もう1名とは、話をした結果、「書籍を読んでそれについて対話する」ということにしました。
選んだのは、小倉広さんの『自分でやった方が早い病』。
もし興味がありそうな人が他にいたら声をかけてもいいと伝えました。


結果、5人の生徒が放課後集まり、色々対話ができました。
書籍の中身について対話するというより、そこから派生して、「今、部活や委員会、クラスなど様々な組織ではどんな課題があり、それをどう解決していったらよいか」という、「組織」に関する課題発見・課題解決の話になっていきました。
皆が、それぞれの「組織」を良くしようと対話し、さらに「学校全体」としてどんな共通課題があり、そこにどうアプローチしていくかという話もできていました。
僕自身は、必要なときに「選択肢」や「考え方」を広げる話題提供をする形で参加していました。


会を見て、率直に「すごくいい場だなぁ」と感じました。
こういう場にわざわざ出てくるような生徒たちは、「変人」の要素を持っています。
大人の「変人」は、多くはそれぞれの組織で孤独で、苦労をしています。
それは、生徒でも同じなのではないかと思います。
だから、変人が集まり語ることができる場(=変人ホイホイ)が必要なのです。
以前に、「文化祭」という軸で3つの学年の生徒が率直に対話するという場をつくることができて、すごくいいなぁと思っていました。
今回のこの会も、そんな機能をもってくれているのではと思いました。


さらに、「この対話はすごく意味があるから、是非継続していこう」と生徒から話があり、何となく当初思っていた「自主ゼミ」のようなものが動きだしそうになっています。
最初の会から2週間後には、(僕には何の相談もなく)第2回が開催され、(僕には何の相談もなく)より具体的な「ケーススタディ」を行い、「組織をどう耕していくか」という話を深めていました。
第1回と同様に参加しようと思っていましたが、他の仕事が同時並行で入っていたためほとんど参加できず。
それでも、議論は生徒だけでどんどん進んでいました。


会の後に、「先生がいなくなっても続けますよ」と宣言する生徒もいて、それはすごく嬉しく感じました。


教員の仕事は、「“場”を設定すること」と「世界を見せること」だと思っています。
こういう「場」を設定し、「新しい選択肢や考え方を提示する」という形で、世界を見せる。
すると、それがきっかけとなって、「何かが始まる」ことがある。
「最初の1個のドミノを倒す」というようなイメージです。


こういう「場」をつくってみたかったのです。
今回、そんな僕の願いが、少しだけ形になって、「最後に悪あがきしてみてよかった」と思っています。
残り1か月、自分にできること、最後にやっておきたいことをすべてやりきりたいと思っています。