『免疫革命 がんが消える日』読書メモ

日本経済新聞社編(2017年)『免疫革命 がんが消える日』日本経済新聞出版社

日経新聞から出ていることもあり、「ビジネス」の視点からの話が多いです。
しかし、2018年のノーベル賞を受賞した「免疫チェックポイント阻害剤」の状況を知るにはコンパクトでよい本でした。
開発や販売、その後の経緯も「何となく」だったものがある程度整理できました。
また、「偽増悪」の話や、ヤーボイとオプジーボの関係などもよくわかり、勉強になりました。
以下、読書メモです。

●がんの芽は1日あたり5000個程度生まれるとされるが、その大半は免疫によって日々、処理されている。

●「オプジーボ」は当初、医療現場では「免疫療法」という言葉に眉唾として否定的な反応示す関係者は少なくなかった。

●一人当たり年3500万円かかる薬価(公定価格)の高さから国の負担があまりに重く「一剤なって国滅ぶ」と批判を浴びた。最後は安倍晋三首相まで出てきて結局は半分の価格にまで引き下げることで決着した。

●オプジーボは抗がん剤が効かないがん細胞にも劇的な効果を持つ。ただし、劇的に効果がある患者は2~3割程度。残りの7~8割の患者にはそれほど大きな効果がない。効く患者と効かない患者に分かれてしまう理由についてもまだ未解明。

●免疫チェックポイント阻害剤は現在のところ2種類。1つが抗PD-1抗体(オプジーボ)、もう一つが、抗CTLA-4抗体(ヤーボイ)。

●2013年、ヤーボイとオプジーボの併用療法によりメラノーマ患者の半数以上でがん細胞の縮小が確認され、米科学誌サイエンスが毎年選ぶ科学重大ニュース「ブレイクスルーオブザイヤー」のトップに選ばれた。

●免疫チェックポイント阻害剤は、現在、全世界で1000に迫る数の臨床試験(治験)が進む。

●オプジーボが効かない人では、6ヶ月以内に打ち切らざるを得ないが、無効との判断が難しいケースがある。腫瘍が一時的に大きくなってしまう「偽増悪」という現象が、肺がんでは8%であると報告されている。残りの92%は本当に悪くなっていたことになるが、目の前の患者がその8%かもしれない。その見極めが非常に難しい。

●免疫チェックポイント阻害剤と併用する相手は多数ある。例えば、放射線治療とオプジーボの投与を併用する方法。放射線治療ではすべてのがん細胞を死滅させることが難しく、これを免疫チェックポイント阻害剤で補完するやり方。