”花まる先生”から考える

先日、朝日新聞の方に取材していただき、その記事が12月5日の朝刊ならびにウェブサイトで公開されました。
取材について、「花まる先生という企画です。とびっきりの授業を見せていただきたいです」と依頼を受けました。
そこで、僕は違和感を感じつつ、考えました。


これから、学習者中心に考え方を変えていかなければならない時代。
「(教師が)教える」から「(生徒が)学ぶ」へ質的な転換を図っていかなければなりません。
ならば、今発するべきメッセージは、まさに「教える姿」ではなく「学ぶ姿」だろうと思います。
これが「花まる先生」という企画が自分に来たことへの違和感でした。


ただ、このような機会はめったにないことで、とてもありがたいことでもあるので、色々考えてみました。
この企画は10年以上続いている企画と聞きましたので、「いわゆるAL型授業」を見てもらっても、それはすでにこの一連の企画の中では「ありふれた授業」になっているだろうとも思いました。
逆に、自分が「今」、情報発信したいことは何だろうと考えたときに浮かんだのが「TPチャート」と「探究学習」でした。
さすがに、授業の取材で「TPチャート」は難しそうだと思ったので、「探究学習」を軸に考えました。
そして、ちょうどいいタイミングで、課題研究の「個人テーマ発表会」の授業があったので、それがいいと思いました。


実際の授業は、


●1時間目 個人テーマ発表会
1人1分間で研究テーマを発表。40人連続プレゼンテーション。
●2時間目 研究テーマ・研究グループ決定
最初の15分で、研究テーマに関するレポートを全員分見て回りながら、テーマ決めのプロセスについて相互にインタビュー。
その後、「研究グループの作り方に関してのアドバイス」を数分で僕から行い、あとは生徒に任せて研究テーマと研究グループを決定。


というものでした。
この授業のいいところは、ほとんどの時間が生徒主体の活動で、教員は支持を出すことくらいなので、「教員が主役」という感じがないことです。
実際に、取材当日には、カメラマンの方が、「花まる先生!」という感じの写真が撮れずに戸惑っている様子もありました(最終的には、生徒と研究テーマについて話している場面の写真が採用されたようです)。
授業後には、インタビューが30分程度あり、それで終了。


そして、今回公開されたこの記事ですが、全体として僕の授業の意図を汲んでいただけており、ありがたいなぁと感じています。
授業の様子は「生徒が主役」という様子が感じられますし、また、授業の背景については、「探究学習の重要性」や「問いをつくるトレーニング」についても紹介していただくことができました。
今自分が大切にしている「自分が本当に知りたいと思って情熱を持てることをやる」、「何度も繰り返すことの重要性」、「結果よりもプロセス」というようなメッセージも盛り込んでいただけました。
写真も、どうしても「先生」が大きくなってしまいますが、教室の雰囲気が多少なりとも伝わるものになっているのではないでしょうか。


そもそも「1時間の授業を見て、その後30分程度のインタビュー」という依頼だったものを、「是非2時間続けて見ていただきたいです」と要望し、了承いただきました。
そのようなことにも対応していただき、また、このような記事にまとめていただき、感謝いたします。
もしわがままを一つ言えるなら、より「学習者主体」を打ち出すために、「生徒がこの授業をどう感じているのか」についての本音を盛り込めるとよかったなぁということです。
そのあたりが気になる方は、是非直接授業を見学に来ていただき、生徒と直接対話していただければと思っています。


また、今回の取材は、該当クラスの生徒の皆さんに了承いただけなければ成立しないものでした。
快く承諾いただき、「いつもの」授業を展開してくださった生徒の皆さんにも感謝いたします。


この文章も一つのきっかけに、「学習者中心」や「探究活動」といったことについて、多くの方と対話を重ねていければ幸いです。
何かご意見等があれば、是非お願いいたします。