セミナー「企業CSV/CSRと教育イノベーション」メモ

2018年11月4日(日)
Edvation×Summit@紀尾井カンファレンス
セミナー「企業CSV/CSRと教育イノベーション」


山口文洋(リクルートマーケティングパートナーズ)
浅野大介(経済産業省サービス政策課長)
若江眞紀(株式会社キャリアリンク)
合田哲雄(文部科学省財務課長)


1、高校教育の課題と可能性
2、「キャリア教育」から「STEM教育」へ
3、ICT+EdTach活用による更なる可能性
4、ボトルネックとなる「大学入試」
5、「企業CSR」から「未来のHR(人事戦略)」へ


(合田)
普通科問題
おおざっぱに言えば、日本の義務教育は世界最高水準である。
しかし、高校に入ると失速する。
7割が普通科、そのうち7割が文系。
だから、全体の約半分が文系。
専門学校は「元気」である。
その中で、「普通科」は未だに知識確認型の入試にしばられている。


学びの「評価」を変えていく試みをしているが、根本的には「高校教育は何のためか?」を考えなければならない。


(浅野)
様々な試み
徳島商業高校の試み
カンボジアの交通渋滞問題に取り組んでいる。
農業科にも素晴らしいプログラムもある。


(若江)
キャリア教育と言えば、「進路指導」と思われがちだが、自分たちは最初から「自分の人生に何が必要か」という視点で20年前から考えている。
高校ではキャリア教育は遅すぎるのではないか、という問題意識。
高校生は「考えることを楽しめない」ことが20年前の時点での問題。


小学校・中学校段階から、「世の中に必要なこと」とか「世の中とのつながり」を伝えていく必要があると考えた。
そこに色々な企業の力を借りた。
教科の単元が終わった後に、関連する企業に来てもらって「今学んだことがこうつながっている」ということを実施。
例えば、小学校5年生の食塩水について学習した後に、東レがいって、様々な液体から特殊な繊維を通すと、「飲み水」がつくれることを実感させる。


(合田)
日本の生徒は、小学校の時に理科がすごく好きなのに、中学・高校で好きでなくなる。
でも、成績はいいので、海外の人は驚く。


日本には膨大な蓄積がある。
それをどう活用するか。


(山口)
高校教育を見直すタイミングだろう。
もう少し社会に出る準備の時間が増えてもいいだろうと思う。
スタディサプリが目立っているけれど、実は全国の過半数の学校にキャリア教育と進路支援、出張授業を展開している。
48年間やり続けている。


(浅野)
「世の中にこんな仕事がある」というようなことがわかってから、どう展開するかが重要。
何を目指していくか。


(若江)
小中学校では、総合的な学習の時間で探究のベースみたいなものができても、高校では教科ベースになってしぼむ。
高校でも、アクティビティベースでやれないか。
個人ごとの興味に従ってできればいい。
ただ、高校の教員ではプログラムをデザインするのは難しいかもしれない。
そこで、企業の協力を依頼している。
色々な分野の専門家が協力。


本当に尖った高校生は、そのまま企業で通用するかもしれない。
その価値を起業は認識するべき。


(浅野)
企業CSRでのぞむことの限界。
「企業の社会的責任」という態度でのぞんでしまう。
将来雇用する人を育てようというHR戦略が重要なのではないか。
それをやるうえでの課題は何か?壁は何か?


(合田)
高校で足りないキーワードは「STEM」と「地域」である。
中学校までは地域の学習がある。
しかし、高校に入った途端、「地域」の視点が消える。
小学校では総合学習が盛んで、中学でしぼんで、高校で消える、という構図。この構図を逆転させたい。


(浅野)
大学入試ともに就職という「出口」(本当は入り口だけれど・・・)も考えないといけない。
「短期的な目標」をどう設定するか?
企業は何ができて何ができないのか?企業はどう変わっているのか?


(山口)
企業の採用で、大学名だけではなく、中学・高校を気にすることもある。
「あなたは大学生までの間に自分でテーマ設定をして何をしてきたか?」
「失敗したときに、どうリフレクションして、どう次につなげていったか」
これが結局一番大事。
これは、本当は大学時代だけではなく、高校までの経験も知りたいと思う。
入試も変わるべきだし、それに合わせて、高校教育の中身も変わっていくべき。


(浅野)
採用活動って変わっているのか?
多くの起業で、人にぐいぐい迫るような方法をとっていないように思える。


(山口)
自分が経営者として自社の採用に対しては、先ほどのようなこだわりがあるが、ムーブメントをつくっていくには経団連などもまきこんで進めていくしかないのではないか。


(浅野)
大学入試は、私立大学にとっては大きな収入源。
採点しやすく、処理しやすい入試を実施してきた。
今、どのあたりにいるのか?
ボトルネックになるものをどう排除していくのか?
マークシートの簡便さをどう超えるか?


(合田)
「日本は大学が多すぎる。地方のおかしな私大はつぶせ」という人がいるが、それは全く間違いだと思う。
地方の私大で色々な工夫が見られる。
首都圏にあって伝統があってという大学をどう変えていくかが最大の課題。


STEMと地域を中核とした高校教育改革を進めていく。


(浅野)
楽しいコンテンツをたくさんつくっていかないといけない。
大学生がやっているようなコンテンツをそのまま中学・高校にあててみればいいのではないか?
「テーマが与えられる」ということは幸せなこと。
多くの高校生、大学生は、そのような「大きな枠としての課題」がもらえない。


どうしたら企業からリソースを引っ張ってこれるのか?


(若江)
「探究の仕方」を身につけていないことが課題。
早くにそれを体験させることが大事。
高校1年くらいで、もっと企業が身近でリアルな課題を現場に与えればよいのではないか。
「ごっこ遊び」にならないような工夫も必要。


(浅野)
キャリア教育は、「デフォルメされた易しめのテーマ」を与えてしまっているのではないか。
大人の「混沌とした毎日の悩み」を投げたい。


(若江)
5%がイノベーティブになることも大事だが、残りの95%も何らかの刺激を受けるということが大事。


(浅野)
未来のHR戦略をどうしていくべきか?


(山口)
国が主導して、何らかの優遇措置を設けるなどのしくみも必要なのでは?


(合田)
「子どもたちを子ども扱いしない」ことが大事だろう。


★感想メモ
合田さんからの「高校教育に足りないキーワードはSTEMと地域」という言葉が刺さった。
特に「地域」というキーワードは、ここまでの自分の実践を振り返っても大きく欠けている部分。
「人材育成」という観点からは、「企業のCSRではなく、ともに考える高校からの人材育成」という視点も企業とコラボしていくときには大事になるだろう。
だから、「実際に困っている課題を高校生にあてる」というのが合理的になる。