セミナー「EdTechは生徒の学びをどう深めるのか?」メモ

2018年11月4日(日)
Edvation×Summit@紀尾井カンファレンス


セミナー「EdTechは生徒の学びをどう深めるのか?」
小村俊平(OECD日本イノベーション教育ネットワーク事務局長)
中村好孝(岡山龍谷高校 専務理事)
三ツ井愛弓(豊島岡女子学園高校1年)
安部亨(Classi 株式会社)


メモ


●小村さんプレゼン
OECD日本イノベーション教育ネットワーク
東京大学公共政策大学院内に事務局が設置されている。
VUCAの時代にどんなコンピテンシーが求められているかについて3~4年議論。


新たな価値を創造する力
責任ある行動をとる力
対立やジレンマを克服する力
→ウェルビーイング


そのための知識、スキル、態度・価値


二つのキーワード
・Student Agency
・AARサイクル


最新のOECDの会議での話
New normal in education
たとえば・・・
・社会のエコシステムの一つとして教育システムを捉える。
・インプット-アウトカムだけでなく、プロセスを含めて評価する。
・共通かつ段階的な学び方ではなく、一人ひとりの個性的な学び方を大切にする(「段階を踏む」という発想から「サイクルを回す」という発想へ)。
・アカウンタビリティだけでなく、頻繁なフィードバックによる質の向上を目指す。


●三ツ井さんプレゼン
パリで行われたOECDの会議の生徒グループに参加。
様々な国から20~30名参加。
年齢も様々。


生徒の考える「理想の未来」について議論。
重要だと思ったことを集中的に議論。

ナイジェリアの生徒が話す男尊女卑のリアルな状況に涙を流すことも。
「平等性」が大事。一部の国だけがいいおもいをするのではない方向性。


アジアからは生徒が参加したのは日本とインドだけ。
もっとアジアから生徒が参加すべきではないか、という提案。


3日間の中で、専門家の会議にも入ったりした。


学生の意見が専門家と同じように尊重されていた。


●中村さんプレゼン
岡山龍谷高校の取り組みの紹介


「マレーシアのコタバルで盆踊りを作り上げる」というPBL
Classiを活用して進める。
「12歳以上の女性は踊ってはいけない」という条例がある、というメールがコタバルの市長から届く。
それについての意見も、Classiでリアルタイムで共有。


生徒は手紙を書いた。
なんとしてもやらせてほしい!
→「許可」がおりた。
すると、地元のさまざまなな大人が入ってきてくれるようになった。
現地には3人派遣する。いけない生徒は当事者意識をもちにくいという側面も。
ただ、当事者意識が少しずつ高まってきている。


ポ-トフォリオの中にはアンケート機能もある。
「蓄積×共有×リフレクション」がすごい。
デジタルデバイスならでは。


学校現場を変えるためには、先に「スクラップ」をしないといけない。
「説得」より「納得」


●パネルディスカッション
※生徒の声で世界が変わる、学びが変わる、ということがあるけれど、最初は不安だったのでは?最初の一歩はどう踏み出した?(→三ツ井)
自分の意見を専門家は求めているのか?という疑問があった。
でも、同じように尊重されていると感じることができてよかった。
一緒に参加した人たちが、皆を大切にしている雰囲気があって安心感があった。


※変わりづらい教員のマインドセットをどうしていくか?(→中村)
東京には様々な研究会がたくさんある。地方にはない。その格差は感じる。
いくら説得しようと思っても難しい。
だから、「しくみ」を変えていく。
「手帳を持たせる」というしくみをなくした。
代わりに何かを導入してしまうと疲弊してしまう。
なくしたことで失われるものを超える何かを必ず得られるようにすればよい。


※教員からの質の高いフィードバックについてはどうか?(→小村)
国際会議では、その観点でも話はあまりなかった。
リーダーシップの一つの在り方は「ゴールを示す」こと。
それに加えてこれから大事になるのは「共感する態度」だろう。
どうしてもリーダーになると「ゴールとの差分」を見て色々言いたくなるけれど、まずは生徒の「現在地」を見てそれを認めてあげることが大事。
アクションの質よりも、リアクションの質が問われるようになった。


※最後に
小村さん
「シェアの落とし穴」、「聞いてもらっていることが自分の考えである」という錯覚が生まれる。
「シェアするもの」の10倍くらい、人には言えないことをたくさんもってほしい。
その中から「いうべきこと」「いった方がいいこと」をシェアするべき。


三ツ井さん
生徒にアイデアを求めたときにばかげたものばかりではないはず。

中村さん
承認欲求に飢えている。
教員も生徒もお互いに承認をしながら先に向かっていくことが重要。


★感想メモ
「理屈だけで人は動かない」「納得・共感してもらうには体験が大事」ということは、この数年で強く感じていたが、今日の小村さんのお話の中でのリーダーシップの重要な要素に「共感する態度」が入っていたこととリンクした。
「組織を耕す」ために重要なのは、「理屈(だけ)」ではない。
また、「マインドセット」ではなく、まずは「しくみ」にアプローチするという中村さんのお話も重要だと思った。
ただ、それをトップダウンで無理に行使すると難しい気もする。
「自然な流れで組織を耕すためにはどうしたらよいか」について考えていきたい。