アレルギー疾患対応研修会メモ

2018年6月29日(金)
平成30年度アレルギー疾患対応研修会第3回
「食物アレルギーの基礎知識と緊急時対応」
赤澤晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)


講演メモ(★は講演を聞きながら浮かんだ「問い」)


●アナフィラキシー
皮膚・粘膜・消化器・呼吸器などの複数の臓器に全身性に症状が見られて、症状が急速に進行してくる状態


●アナフィラキシーショック
アナフィラキシーにショック症状を伴う状態(血圧低下やそれに伴う意識障害などの症状を伴う)。


●アナフィラキシーショックによる死亡数
2013年厚生労働省
食物 2
医薬品 37
ハチ刺傷 24


●原因食物・診断根拠
①明らかな症状の既往
②食物負荷試験陽性
③IgE抗体等検査結果陽性
④未摂取


●食物アレルギーの検査
・皮膚テスト(プリックテスト)
皮膚に軽い傷をつけてアレルゲンエキスをしみこませる。
・特異的IgE抗体検査
・食物経口負荷試験


●食物アレルゲン
消化酵素や加熱処理の影響を受けやすいものは治りやすい
卵、牛乳、大豆、果物
消化酵素や加熱処理の影響を受けにくいものは治りにくい→成人型の食物アレルギー
ピーナッツ、そば、貝、エビ、カニ
★この違いは何?


●食物アレルギーの治療
・食物除去
・薬物
抗ヒスタミン剤、ステロイド、経口インタール
・アナフィラキシーへの対応


●食物アレルギーの治療(研究段階)
・抗IgE抗体
・アレルゲン免疫療法
そのものを少量ずつ経口で
ダニ・スギ花粉舌下免疫療法、アレルギー性鼻炎で適応


●エピペン(アドレナリン自己注射剤)
アナフィラキシーショックの全ての症状を緩和する。
心拍数増加、心臓の収縮力増強、毛細血管収縮、気管支の筋肉の弛緩
副作用がほとんどない安全な薬(思いっきり走った後の心臓のドキドキくらい)
効果は5分以内に認められるが、効果の持続時間は20分程度。
★薬の即効性や持続性はどのように決まるか?即効性が高い薬や、持続性が高い薬の特徴は?


【質疑応答】
※エピペン使用時に出血したらどうする?
ももの外側であれば、筋肉で太い血管がなければほとんど出血はないはず。
もし出血してもおさえておけばOK。


※AEDで「使用する必要なし」となるのはなぜ?
アナフィラキシーのときには、まずは心拍が増えるが、やがて心臓がへたって心拍は減る。
しかし、波形に異常は出ないので、使用の必要を判断しない。
その場合には、心臓マッサージを行う。迷ったら、とりあえず心臓マッサージをして良い。


※看護師は「医療行為」にあたるからエピペン注射できない?
その場に居合わせた一般人であればOK。
救命救急士なんかは連絡して指示を受けないと打てない。


【最後に・・・】
授業で使えそうな課題をいくつか作ってみました。
★ハンノキや白樺の花粉に対してアレルギーがあると、ある時りんごに対してのアレルギーが出始めることがある。これはなぜか?


★牛乳アレルギーの子どもが、ミルク入りの缶コーヒーが顔にかかりじんましんが出た(接触じんましん)。なぜ、皮膚という物理的バリアがあるのにこのような反応が出るのか?


★エビでアレルギー症状が出る場合、半数以上でカニでも症状が出るが、タコ、イカなどの軟体類や貝類は食べられることが多い。魚でアレルギー症状が出る場合、全ての魚が食べられないことはまれなので、食べられる魚を見つけることができる。これらの特徴を進化と関連づけるとどのような考察ができるか?