”変人”がつながる場としてのイベント

「変人」という言葉は、一般的にはあまりポジティブな意味では使わないかもしれません。
しかし、僕はとてもポジティブにとらえています。


オプンラボの小林さんは自らを「変人コレクター」と言っています。
色々な「変人」たちとつながって、それがきっかけでまた新しい「変人」とつながって・・・というようにネットワークは広がっているようです。
小林さんは、「変人と高校生がつながれる場」として近未来ハイスクールを立ち上げました。
そのウェブサイトにはこう書かれています。


”近未来ハイスクールは、第一線で仕事をする「職業人」と「学生・先生」をつないで、未来につながる「行動変容」のきっかけを作ります。
ここで触れる職業人は「変人」です。他の人との違う人=変人は、その差異が価値となり、さまざまな形で社会課題の解決に貢献しています。”


「変人」は、単に「人と違う」だけでなく、「自ら変わり続けられる人」ということも共通しています。
その変化のスピードが速いので、どんどん「人と違う」部分が際立ってしまうのかもしれません。


僕のイメージでは、「変人」とは、「課題発見が得意で、発見した課題は解決せずにはいられなくて、そのために色々なアイデアを出して、必要に応じて協働して、というように、常に”面白いこと”をやり続けている人」です。
これは、経産省が「未来の教室」事業で掲げている「チェンジメーカー」とかなり近いものだと感じています。


ただ、厄介なのは、最初の「課題発見が得意」で「発見した課題は解決せずにはいられない」というところです。
今の「普通」の日本のコミュニティで、この発想でバシバシ発言したり行動したりすることは、「空気が読めない人=KY」認定されがちです。
つまり、「変人=出る杭→打たれる」ということになりがちです。


こうして、様々なコミュニティに一定の確率で存在する「ネイティブ・変人」たちは、たいていの場合マイノリティとして辛い思いをしているのです。
「変人は組織の中で孤立しがち」ということです。
そして、どうやらこれは、「特殊事例」ではなく、日本中のありとあらゆる組織に存在することらしいということも、様々な「変人」に触れることでわかってきました。


さて、どうするか、です。
近未来ハイスクールでは、「出る杭を育てる」というコンセプトを打ち出し、高校生の中にも存在する「ネイティブ・変人」を発掘し、「君は出る杭かもしれないけれど、どんどん出ちゃっていいんだよ」と背中を押す場として機能しています。
そのために様々な変人に協力してもらい、様々なプログラムを用意しています。


このこと自体はとても重要なことです。
ただ、「変人は組織で孤立しがち」という問題に対してはどうでしょうか。
この問題に対して以下のようなことが必要だと考えます。


●「ネイティブ・変人」は、「自分は変人である」ということを自覚し、「楽しく生きる変人」の生き方に触れて、変人であることをポジティブにとらえられるようになること。
●「非ネイティブ・変人」は、「楽しく生きる変人」の生き方に触れて、変人という概念をポジティブにとらえ、「あんな素敵な変人になりたい!」と「変人予備軍」になること。
●そんな「ネイティブ・変人」と「変人予備軍」が、「自分と同世代にもこんな変人がいたんだ!」と気付き、「一人じゃない=You are not alone」の感覚を持てること。
●変人同士の幸運な出会いをきっかけに、変人同士がこの先も互いを支え合える「つながり」をつくれること。


端的に言えば。
「変人よ、君の生き方は素晴らしい!そして、世の中にはこんなに変人がいるんだ!つながろう!そして勇気をもって生きよう!君は一人じゃない!」
というドストレートなメッセージをぶつけてあげることだと思うのです。
それは、「組織で孤立しがちな変人」に前向きな気持ちと勇気を与えてくれることでしょう。


「自分のごく身近なところで変人を増やす」のは、実際にはなかなかに困難です。
だから、まずは「変人同士がつながって支え合う」ことが現実的です。


再び近未来ハイスクールに戻ります。
このイベントの本質は、実は「面白い変人」や「周到に準備された面白いプログラム」ではないのかもしれないと思うようになりました。
それらは、「変人」を誘因するための「餌」のようなものでいいのかもしれません。
大事なことは、そうして集まった彼らの相互作用にあるのです。
「魅力的な変人やプログラム」は、「変人を集めるための装置」として機能すればよいのです。
この機能を、僕はこう表現します。


「変人ホイホイ」


今の日本には、「孤立しがちな変人」のための「変人ホイホイ」が必要です。
しかも、できるだけ多様な人たちにリーチできるように、多様な「変人ホイホイ」が必要です。


そんなことを考えていたら、自分のやっていることも「変人ホイホイ」として機能していることをメタ認知し、自己肯定感が高まります。
近未来ハイスクールも、これ以上ない「変人ホイホイ」です。
多様な「変人ホイホイ」をたくさん仕掛け、かつ、そこで集まった変人たちが「You are not alone」を実感できるような仕掛けを考えたいです。
もっともっと「変人ホイホイ」を増やしたいです。


だから、皆さん、たくさん「面白いこと」をしましょう。
素敵な「変人ホイホイ」が世の中に増えることを心から願っています。