"おたがいさま"に満ちた地域

南医療生協見学ツアー、1泊2日のスケジュールが終了しました。
ものすごく衝撃的な体験でした。

僕自身のビジョン「誰もが生きやすい社会」を実現するために、「助けてと言える能力」を身につけてもらったり、「多様性の認識・受容・活用」を意識してもらったりできるような活動を学校という場で考えてきたつもりです。
しかし、「学校」という場に閉じてしまっているという問題点も感じていました。
もっと「つながり」を広げていければ、「誰もが生きやすい社会」により近づくと思い、「地域」というテーマに今年は取り組みたいと思っていました。

そんな課題意識を持ちながら見学した南医療生協の在り方には、本当に圧倒されっぱなしでした。
僕のビジョンが、かなりの程度実現している姿を目の当たりにしたからです。
「こんなこと、できるんだ!」と何度も何度も思いました。

見学前は、単に「南生協病院の見学」としか思っていなかったのですが、実際には、病院は全体の中の一部であり、それを包含する「南医療生協」そのもののエッセンスの見学という内容でした。

南医療生協の何がすごいのでしょうか。
それは、「おたがいさま」という言葉に凝縮されています。

「医療」という観点から見ると、南医療生協の基本的な考え方が「医療=病気」ではなく「医療=生活」ということが重要です。
「病気になって病院に来た人を治す」だけでなく、「積極的に地域と関わっていく」という医療を目指しているわけです。
そして、その隅々に「おたがいさま」の精神が息づいています

その象徴として、「おたがいさまシート」があります。
これは、地域の組合員の方が「困りごと」をおたがいさまシートに書いて提出し、それを南医療生協として対応していくというものです。
医師や行政が必ず入るようになるとフットワークが重くなりがちですが、南医療生協では、ものすごい数のボランティアのサポーターが各地域にいて、「困りごと」の90%は地域のボランティアの力で解決できているそうです。

また、「おたがいさまの家」という施設が少しずつ増えてきており、地域の人と人をつなげるような役割を果たしてくれます。
人々が集い、より良いくらしにつなげていく「場」として機能しています。

このような一連の活動や、病院の設計からサービスに至るまで、組合員の意見が反映されています。
様々な議題を話し合う「100人会議」が毎月開かれ、「どうしたら南医療生協が良くなるか」を、日々模索し、つねにアップデートされているのです。

これら全ての活動に、「おたがいさま」の精神に満ちています。
そして、その理念に共感し、強い情熱を持った人にも満ちています。
様々な場所を見学させていただき、それぞれで説明をしてくださる方がいましたが、その誰もが目をキラキラさせて、熱く語りかけてきてくれます。
また、各施設に集う人たちが、皆本当にいい表情をしています。
この姿こそが、南医療生協の本質なのだと思いますし、僕が強くこころ動かされる理由です。

見学ツアーの冒頭に、「2日間という短い時間では、とても全体像を知ることはできないと思いますが」という話がありました。
確かに、南医療生協の「全貌」を知るには時間が短すぎました。
しかし、エッセンスを見学させてもらうことで、その活動や人の「多様性」を知るとともに、どこに行っても、誰と会っても変わらない「共通性」も知ることができました。
だから、今回の見学以上の「多様性」に触れずとも、南医療生協というものをある程度理解することができたのだと思います。

目にするもの、耳にするもの、全てに圧倒され、そして、ワクワクしました。
自分でも何かがしたくてたまらない気持ちになりました。
こんなに強く感情が動く体験はなかなかありません。
このタイミングでこのような経験ができ、自分自身を揺さぶってくれたを本当に幸運に感じます。

今回のツアーのきっかけを作ってくださったオプンラボの小林さん、ツアーを実現してくださった進谷さん、そして、南医療生協の皆様と、一緒に見学させていただいた皆様に深く感謝いたします。