出口治明さん講演会メモ

今日は、田園調布雙葉中学高校の情報科の小林先生の公開研究授業に参加してきました。
特別講師として、ライフネット生命創業者で、APU学長の出口治明さんがいらしていました。
テーマは「日本の未来を考えよう」
「50年後の日本の未来は明るいか?」というコア・クエスチョンを中心に3時間の授業が進んでいきました。

以下、今日の中で特に気になった部分のメモです(★は雑感です)

●日本の未来は大変??
日本は「少子高齢化」で大変。
それは、まだまだやるべきことがたくさんあるということ。
こんなに楽しいことはない。

★この発想自体が、ネガティブマインドをポジティブに変える秘訣だと思いました。
僕自身、この言葉を聞いて、「これから自分は何をしていこうか」とワクワクしました。
「大変な未来」は、「やることが尽きない、やりがいのある世界」なのですね。

●出口さんの基本思考プロセス
「タテ」昔の人はどうやったのか?
「ヨコ」世界の人はどう考えているのか?
「算数」データで見よう。

★徹底してデータに基づいてお話されていました。
このあたり、「感覚」でしかものを言えないのとかなり違いを感じます。

●若者が高齢者を支える??
「3人の若者が一人の高齢者を支える」という表現は、「若者が高齢者を支える」ということを前提にしている。
しかし、そのような考え方はヨーロッパでは消えていっている。
「高齢者が高齢者を支える」あるいは「社会全体で支える」という仕組み。
困っている人に集中する。
「所得税と住民票」から「消費税とマイナンバー」へのパラダイムシフト
「消費税は弱いものいじめ」という批判はウソ。
バリアフリーが進んでいるのは、イメージとしてはヨーロッパ。でも、ヨーロッパは消費税で支えられている。

★「皆で皆を支える」という発想、「高齢者は(無条件で等しく)支えられる人」というパラダイムからの脱却。
消費税をどうとらえるか、という部分も新しい見方をいただきました。

●どうしたら未来を変えられるか?
「将来がどうなるか」という人は「今の延長線上」で考えられている。
でも、「皆が行動すれば世界が変わる」
では行動するには何が必要か?人間は腹落ちしないと動かない。
そのためには勉強「タテ・ヨコ・算数」が必要だ。

★「腹落ち」したからといって動き出せるわけでもないけれど、「腹落ち」のために「タテ・ヨコ・算数」の思考を鍛えるということは極めて重要だと思いました。

●「メシ・フロ・ネル」の製造業の工場モデル
戦後の日本は高度成長。
これを引っ張ったのは、自動車や電気電子。
どういう風に働いたらいいのか?
製造業の工場モデル。
力が強い男性が長時間働いた方が社会はうまくいった。
「メシ・フロ・ネル」の生活でよかった。
母親は家にいた方がよかった。

★今でも、学校現場には「メシ・フロ・ネル」のような働き方が求められているようなところもあります。
そこから自由になって、「人・本・旅」で思考を広げることが重要だと思います。

●女性の社会進出の意義
サービス産業のユーザーは全世界のどこでも6~7割が女性。
企業に女性がいないと、女性の欲しいものはわからない。
今の日本経済を支えているという自負をもっているのは50~60代のおじさん。
でも、彼らに女性の欲しいものはわからない。
女性が社会に出ていかないと経済が伸びない。
「需要と供給のマッチング」が必要とされている。

★「売りたい人」だけで考えるのではなく、「買いたい人」の発想を入れるべきという当たり前のこと。
でも、こうして指摘されないと、現状の「おかしさ」になかなか気付けないのだと思います。
そして、この構図は、学校の授業を「教えたい人」だけで考えるのではなく・・・につながると思います。

●どうすれば意識を変えることができるか?
「意識や文化は社会や制度が変える」というのが世界の共通認識。
フランスでは、「男女の候補者数を同数にしないと政党交付金をやらない」という制度をつくると、それが当たり前になっていく。
意識は変えていくことはできる。でも、制度を変えていくことが社会としては大きい。

★一教員として「制度を変える」ことはなかなか難しいですが、自分の手の届く範囲で「制度を変える」ことはできます。
具体的には、「カリキュラムマネジメント」だろうと思います。

●人・本・旅
色々な人に会う、本を読む、旅をする。
「少し遠いところから見てみる」「距離を置いてみてみる」ことで見えてくるものがある。
それで生産性が上がる可能性がある。
日本の生産性が落ちてきたのも、きっと「ミスマッチ」なのだろう。
製造業が引っ張ってきた時代から、違う社会に変わっているのに、同じ働き方をしてしまっているから生産性を落としてしまっているのだろう。

●リーダーとは?
リーダーが大事という話。
リーダーとは何か?
他校の高校生と一緒に話す機会があれば、自然とリーダーが出てくるはず。
どんな社会でもそうである。
国際社会のリーダーと言っても、ある程度英語ができる前提に立てば、学校の中のリーダーと同じ。
物事を瞬時に考えるとか、交通整理ができるとか。
一つだけ特徴を言えば、「明るい人」が多い。

●「知識は力」であり「教材は過去にしかない」
ロジャー・ベーコン「知識は力である」

「これから東日本大震災のような震災は起こるか?」
「では、そのような震災のときに、東日本大震災について学んでいる人とそうでない人でどちらの方が助かりやすいか?」

将来何が起こるかわからないけれど、教材は過去にしかない。
役に立つかどうかわからないけれど、勉強しておけば役に立つかもしれない。
勉強は過去のこと。
勉強は「選択肢を増やす」

スキーはガンガン滑るのと、単に見るのと、どちらが楽しいか?
スキーを勉強している人は、少なくとも選べる。
スキーを勉強していない人は、選べない(見ているしかない)。
勉強しておけば、いざというときに「滑れる」
それが勉強の意味。

★東日本大震災の部分は、ドキっとしました。
ロジックとしては明快なのに、自分はそれを本当にできていたか、あるいはこれからどうしていくか。
スマトラの津波で、水が引いていったときに、多くの人は海岸に近づいて見物していたのに、「以前、こういうときは高い場所に避難をならった」という女の子が周囲に呼び掛けて皆助かったという話を聞きました。
そういうことなのだろうと思います。

●理想の教育とは?
生まれた赤ちゃんには何もない。人間は教育を受けて初めて人間になる。
学ばないと人間は何もできない。

立命館中学・高校は、生徒会の役員と学校の幹部が「どうやったらもっといい学校になるか」について毎月ディスカッションしている。
こういうことをやっていけば、「社会は自分たちが創るものだ」と思える。
送辞・答辞の総代は、生徒が立候補する。複数出た場合には、生徒が話し合って決める。

教員が教えるという一方向ではなく、生徒も一緒に双方向でやること。

★「他律から自律へ」というのが基本なのだと思います。

●日本人としてあるべき姿とは?
資源がない国は、「自分の頭で自分の意見を言える人」をつくらないといけない。
人と違うことを自分の頭で考えること。
一言でいえば「とがった人」
製造業のころは「協調性」が求められていた。

●自分の思っていることを相手に伝えるのには何が大事か?
誰と話すときでも、「タテ・ヨコ・算数」を大切にしている。
数字ファクト、ロジックが大事。
自分が話したいことをデータで裏付けないと。

●どうすればイノベーションを起こす人を増やすことができるか?
それは、データを見れば明らか。
アメリカのベンチャー企業の経営者は、半分が留学生、半分がアメリカ人。
変な人がいれば刺激される。

★「変人」と触れる機会を増やしたり。あるいは、「自分の隣にいるかもしれない変人の存在に気が付く」ようなことも必要だと思います。
こういう「場」をもっとたくさん創りたいと思いました。