多様な材料が多様な思考を生む

11月25日(土)に中学生向けの公開講座を行いました。
テーマは「細胞の観察」。
15名の中学生が参加してくれました。
はじめに、全員が輪になって「細胞に関する座談会」を実施しました。
首都大学東京の松浦先生のスタイルを参考に、参加者全員が1回は何かの質問をすると言う設定でやってみました。
質問がなかなか思い浮かばない生徒のために、配布プリントにはあらかじめ約20の問いが並べてあります。
その中から何かを選んで質問しても良いし、そうではない自由な質問をしてもらっても良いと言うことにしました。

こちらが準備してきたもの以外にたくさんの本質的な質問をしてくれました。

細胞はどうやってできるのか?
細胞分裂でしか増えないのなら、最初の細胞はどうやってできたのか?
細胞の分裂回数に限界はあるのか?
細胞分裂をしても同じものが作られるだけのように思えるのになぜいろいろな種類の細胞があるのか?

1つの問いに対して得られた知識をもとに次の問いが次々とつながっていく。
全員で輪になって座談会形式にしたことも、気軽に質問をしやすい空気に多少はつながったように感じました。
「問い」は頑張って作るものではなく、自然と湧いて出てくるものだと改めて思いました。
ただし、その時に必要なのは好奇心だと思います。
今回の形式は、生徒の好奇心を刺激するのに良い形式だと感じました。
こんな形式で、サイエンスカフェのようなことをやれるといいなと思います。

座談会の後は、顕微鏡の使い方やプレパラートの作り方を習得し、その後は準備された材料の中から好きなものを観察すると言うようにしました。
色々な野菜や果物、ツナ缶や肉じゃが、ポテトチップなど様々なものを準備しておきました。
定番の腐ったスープも板山先生が準備してくださいました。

参加者は皆それぞれの興味関心に従って、いろいろなものを次々に観察していました。
中には、うまくプレパラートを作れなかったり、うまく観察できなかったりしたものもありましたが、「失敗」の原因を自分で考え、何度も挑戦している姿も見られました。
成功させることに意識が向いてしまうと、このような失敗を見たときについつい手を貸してしまいたくなるものですが、最終的に成功するかどうかよりも自分の頭で考えて試行錯誤すると言う経験こそが大事なのだと思います。

また、ある程度の時間の中で好きな材料を好きなように観察できると言うのもポイントだと思います。
みんなが決まったいくつかの材料だけを使うと、どうしても優劣を感じてしまうのだと思います。
しかし、その時間内でとても全部は見切れないような材料を用意しておけば、まずはどの材料を選んだのかということだけでもオリジナリティーが出ますし、たとえ観察がうまくいかなかったとしても、「この材料はうまく観察できないんだなぁ」と言うような情報を他の生徒に与えることができます。
つまり、すべての結果がポジティブなものになり得るのです。

約1時間参加者は自由に観察を続けていましたが、その中で「やった!」とか「すごい!」と言う瞬間が皆あったように見えました。
ここでもポイントは「?」と「!」だと思います。
しかも、それは人から与えられたものではなく、自分の中から湧いてきたものであるということが重要です。
こちらが最初から最後までお膳立てをして、「良い思い」をしてもらうのではなく、自分なりに考え試行錯誤できる「場」を提供すると言う感覚が大事なのだと思います。
今回の公開講座では、前半の座談会でも、後半の顕微鏡観察でもそれを意識しました。
参加してくれた中学生はとても楽しそうにしていましたし、自分だけの「?」と「!」を持って帰ってくれたことと思います。

 

以下、アンケートからの抜粋です。

●大事だと思ったこと
いろいろ試してみること。いろいろな発見があるから。
今日見た細胞はいろいろな種類があったが、もとはすべて昔誕生した1つの細胞からできていたと言うこと。見た目が全く違うキウイや腐ったスープは同じ細胞だと考えにくいから。
同じ種類のものは形を変えても細胞の形は変わらないと言うこと。じゃがいもの生のものとあげたものと煮たものの細胞観察したらほとんど同じだった。
なんでも疑問を持つ、そしてそれを試してみることが大切だと思いました。なぜならばそのことでまた新しい発見をすることができるからです。
それぞれの細胞の特徴。その物の色などにつながっていることがある。
いろいろな考えを持つこと。

●うまくいったこと
ツナの細胞(筋肉)がきれいに見れたこと。
ピントの合わせ方のコツがわかった。
キャベツなどの表皮をうまく取れた。
結果に対する自らの考えを持てたこと。
先生とのコミニケーション。
腐ったスープを観察するときになかなかピントが合わせられなかったけど絞りをうまく使って自力でピント合わせることができた。
心臓の解剖。
キウイフルーツのトゲが見れた。
デンプンをヨウ素液で青く染めたものとか何もしていないじゃがいもを比較することができた。
今日はプレパラート用に試料を程良い大きさ薄さにして作ることができました。
最後にやったポテチがよく見られた。
パプリカの細胞壁がきれいに見えた。
顕微鏡をうまく使えました。

●疑問に思ったこと
観察したものごとに細胞の形が違うこと。
細胞によって働きが違う。同じ人体の場合筋肉と臓器など。DNAは同じなのにどうして働きが違ってくるのか?
トマトの表皮を見たときに色がオレンジや黄色だったこと。
パプリカの色素は細胞のどこについているのか?
トマトの赤色は中身がすけたもの?もしくはオレンジが重なって赤に見えたか?
先生がはじめのほうに話していた「細胞は最初宇宙から来たかもしれない」と言う説がとても興味深かったです。面白そうなのでもっとよく調べてみようと思います。
細胞にはどんな種類があるのか?丸いのから細長い筋肉みたいなものまで。
腐ったスープの中にいろいろな生物がいる。
そうしたら細胞の粒を分解できるのか?
どんなものでも細胞が完全に同じものが1つもないことに気づいた。
小さな虫などが動いていたりしたが、脳のような考えるところはあるのか?
なぜ細胞の見た目や特徴が異なるのか?
なぜおかしな細胞壁ができているのか?
トマトの表皮に所々いた奴が何なのか気になりました。
菌の種類は今のところ発見されているのはどれぐらいあるのだろう?
道管はくるくるしている。
ポテチに細胞があること。

●感想
きゅうりの種の周りの細胞にすごくとげがあったことにびっくりした。普段食べていたものの細胞が想像していたのと全然違った。とても楽しかった。
トマトの色が赤なのによく見ると黄色と言うこと。
最初の座談会が良かった。とても有意義な時間でした。
細胞にはいろいろな形があって、同じ野菜でもきゅうりとにんじんでは形が全然違っていて見比べるのが面白かった。腐ったスープの住人たちには衝撃を受けた。
心臓の仕組みが面白い。
ミドリムシやゾウリムシは外側からは動いて見えなかったけれど、顕微鏡で見たら動いていたり、人間が死んでいても細胞が死んでいないと言うところに驚いた。
一つ一つ違う細胞の中身を見るのがとても面白かったです。
普段それがあれば「それ」でしかないと思っていたが、細胞レベルで見ると平たく見えていたものがこんなに複雑だったり新しい世界が見えた。
それぞれ個々の特徴が細胞に現れていて面白いと思った。さらにいろいろな細胞を見てみたいと思った。
キウイのとげとげが見られたこと。とても楽しかったです。細胞の事だけでなく心臓の仕組みやがんの仕組みを知ることができ面白かったです。
キウイのトゲはすごかったです。
鶏の心臓は小さいけれど複雑な形をしていることを知れて面白かった。