教科書の学びからリアルな体験へ

理系生物の授業の終了10分前に、見学に来ていただいていた奥津先生先生に「生態分野でぜひ伝えたいこと」というお題でお話をお願いしました。
奥津先生先生は、2つの話をしてくださいました。

1つ目は、ご自分の研究対象であるカヤネズミの話です。
カヤネズミとはどんな生物なのかから始まり、どんなフィールドでどんな研究をしているのか端的にお話しくださいました。
生徒も、受験モードから一気に楽しい生物モードへと切り替わったようでした。
個体数の調査の話では、教科書に出ている「標識採捕法」は基本的には哺乳類には使えない、だって捕まえられないから・・・という話などは、教科書通りでないリアルな話で貴重なお話でした。

2つ目は、ボルネオで現地住民のところにホームステイしたときの話。
生態学に限らず、学んだことを使って様々なことを考えるということは大切。
例えば、熱帯林は伐採してしまうと土壌が流出してなかなか再生しないということを学習すると、出来る限り熱帯林を保全しようと思うのではないか。
しかし、現地住民と話をしてみると、彼らにとっては熱帯林の伐採は「生活を豊かにしてくれる素晴らしいこと」につながっている。
伐採のために道路ができ、交通の便が飛躍的に良くなる。
また、アブラヤシプランテーションによって経済的にも豊かになる。
スマートフォンを持って、Facebookもできる。
そうなると、「熱帯林は大事だから保全しなければ」などとは単純に言えなくなる。
こういう感覚を現地に行って実際に感じることがとても大切。
皆さん是非いろいろなところに行ってください、というお話。
こちらも、教科書を読んでいるだけでは伝わらない、リアルな話で、生徒たちも様々なことを感じ、考えたことと思います。

どちらの話も、教科書の学びは単に受験のためだけにあるものではなく、そこで得た知識をもとに、様々な「リアル」に触れ、感じ、考えてほしいというものだったと思います。
僕にはなかなかこういう話はできません。
だから、それができて生徒を刺激していただける方にこうして話をしてもらえるのは、とてもありがたいことです。
これも「世界を見せる」ということに関する1つの方法です。

昼休みには、2名の生徒が奥津先生先生のところに来て熱心に話を聞いていました。
こういう光景を見て、あぁよかったなぁと思いました。