AL型授業の体験の価値

先週の茨城県での宿泊研修で、2日目の冒頭に、「模擬授業体験」を実施しました。
参加者は全員高校生物の先生方なので、「普通の」課題プリントをやってもあまり意味がないように感じました。
普段の授業での生徒と同じような体験をしてもらうためには、「内容がよくわかっていない題材」を取り上げる必要があります。
また、扱う題材には、それなりの「扱う意義」も必要となります。
そこで頭にひらめいたのが「脳科学」でした。

ちょうど、先日RIMSEの連載で「記憶」に関して書いたばかりでしたし、これを広く「リテラシー」として普及したいという思いもあったので、まさに適材だと思いました。
そこで、このリンク先にある文章を素材として課題を作成しました。

参加された全ての先生が、このような内容については事前知識はほとんどなく、また資料も初見ということでした。
まさに、授業での生徒と似たような状況が生まれ、狙い通りでした(事前知識に差がある場合には、それも一つの状況としていいかなと思っていました)。

簡単な体験のつもりだったので、30分程度でいいかなと思っていましたが、「読み込む」のに20分以上かけている方が多く、課題に取り組んでいただくことを考えて50分での実施にしました。
「読み込む」やり方も、マーカーをひいたり、ノートに概念を整理したりと人それぞれで、そのあたりも授業の状況と似ていると感じました。
先述したように、20分ほどは個人での取り組みのみで全く対話がなかったのも興味深い点でした。
やはり、皆さんある程度「一人でもできる」という感覚(自己効力感)があるので、むしろ「まずは一人で取り組んでみたい」という意欲で活動されていたのだと思います。
実際の授業では、「できる」と思えない生徒は、初めから対話で進めていくことによってハードルが下がるということもあると思います。

また、これはあえてですが、導入で講義を一切しませんでした。
50分の授業後の振り返りで、「最初取り組みにくかったと思いますが、冒頭にこんな講義を入れることも可能です」と、5分程度の講義もやってみました。
すると、その講義が、その後の活動のハードルを大きく下げるということも理解していただけましたし、目的に応じて効果的なことも、その逆もあるという点もご理解いただけたように思いました。

参加されたある先生のコメントを引用いたします。

”模擬授業体験では、生徒の立場を体験することができ、とても有意義だった。
これまで与えたプリント課題が、生徒にどのような負荷をかけていたかと言うことに思い至った。
今後生かしていこうと思う。
脳科学の進展についても驚きを感じた。”

教員向けの研修会をデザインするときも、「目的」に応じて方法は多様だと思います。
今回は、ある目的に応じた形を一つデザインすることができたように思います。