「生物多様性」について考察する課題

生態系のまとめの課題として、画像のような課題を実施しました。

●目的
・生態学に関する基本的な知識・理解を前提として、独自の課題設定・情報収集を通じて、「生物多様性」について考察する。
・教科書の学習内容と社会で起きていることを関連付けることができる。

●課題
「生物多様性が失われつつある事例」を一つ取り上げ、以下の内容を含むようにA4用紙2枚以内でまとめよ。

様々な事例が提出されました。
そこからの学びを共有いたします。

●中央新幹線建設における生物多様性への影響
中央新幹線(リニア新幹線)建設により、
・トンネル残土の運搬による自生しない植物の持ち込み
・トンネルによる地下水の枯渇による河川の魚への影響
・ユネスコエコパークの横断による貴重な猛禽類への影響
が心配されている。

●ビクトリア湖の実態
食用魚としてナイルパーチを導入
→固有種が半減、湖の富栄養化、アオコの発生、酸素不足
→人間のによるナイルパーチの乱獲等で量が安定し、固有種は増える?
http://www.asahi-net.or.jp/~jf3t-sgwr/inyushu/nairuparthi.htm

●オーストラリアはカエルの楽園?
約85年前にサトウキビの根を食い荒らすケーングラブによる被害
→駆除のためにオオヒキガエルを導入
→ケーングラブは土中にいるため、オオヒキガエルは食べない。天敵もいないため数が増加
→通常カエルは100個ほど産卵するが、オオヒキガエルは1万以上産卵。
→最初は102匹だったものが、20億匹以上に。
→キャットフードで肉食性のアリを呼び、オオヒキガエルを攻撃させる
→オオヒキガエルは減少したが、固有のカエルへの被害の可能性も
http://tvmatome.net/archives/1498
http://ligustrum.blog21.fc2.com/blog-entry-205.html

●ナトロン湖の生態系について
湖の底や周辺から炭酸ナトリウムを噴出し、動物たちを「石化」してしまう。
天敵がいないためフラミンゴはここで繁殖。
レオクロミス・アルカリクスという魚は固有種。
上流の森林伐採やダム建設により縮小し、最終的に草原になるとされる。

●アジア最古の環境破壊
秦の始皇帝が、黄河流域の森林を大量に伐採
→雨で表土が流され、黄色く濁った。

●酸性河川の中和事業
群馬県吾妻川は酸性の河川(火山由来の硫化イオン等の影響)
→流入する河川の一つ湯川の水を中和する事業(世界初の中和事業)。河川に石灰を投入。
→中和が進み、魚がすめるように。

●ビャウォヴィエジャ・プーシュチャの生態系について
ビャウォヴィエジャの森は、ヨーロッパ最後に残された原生林の意味。
ポーランドとベラルーシの国境をまたぐ。
・ソ連がポーランドへの亡命を阻止するために建てた鉄のフェンス
→ヨーロッパバイソン(野生に600頭しかいない)の群れが分断化。
・ポーランド政府による保護区周辺の森林の伐採(甲虫の被害の拡大を防ぐため)
→人の手が入ることで何らかの影響が出る危惧
http://www.gizmodo.jp/2016/04/bialowieza.html

●ため池の生態系
放っておくと、池の中で死んだ生物や枯れ葉などがヘドロとして堆積。人々はドビ流しという方法で大掃除をしていた。
→人の手が入らなくなり、アオコが大量発生
→珪藻類が減少し、それを餌とするドブガイも減少
→ニッポンバラタナゴが減少。
http://www.7midori.org/katsudo/kouhou/kaze/meister/22/index.html


●原子力発電と温暖化
原子量発電所は、発生する熱のうち3分の1を発電に利用し、残りの3分の2は海に捨てる。
→南方系の魚介類が冬を越せるようになり、本来いるはずのない生物が繁殖
東日本大震災後、すべての原発が停止し、減少していた北方系の魚介類が戻ってきたという事例あり。

●太平洋の海洋保護区
2014年アメリカはハワイ南方になる海洋保護区の面積を6倍に拡大。
漁や開発ができなくなり、生態系が回復しつつあり、将来的には漁獲量が伸びることが期待される。
http://www.sankeibiz.jp/express/news/140927/exh1409270700001-n1.htm

 

●タイワンザルの侵略
和歌山県で動物園からタイワンザル10~30頭が逃げて野生化。
→その後、定着
・タイワンザルによる農作物の乱獲
・ニホンザルとの交雑種の繁殖
・家屋、人への被害
→特定外来生物に指定され、捕獲されており、減少傾向。
※青森県でもタイワンザルが野生化したが、68頭のタイワンザルと交雑種すべてを捕獲

●ホソオチョウの外来種問題
1970年代以降、日本各地で局所的に発生が確認。
幼虫の食草はウマノスズクサで、日本の在来種であるジャコウアゲハと同じ。エサ資源をめぐる競争。

●森林とビーバー
商業目的でアルゼンチン政府がフエゴ諸島にビーバーの雌雄50匹を移入。
→毛が硬すぎて使えず、天敵もいないため個体数を増やす。2008年には10万頭に。
→ビーバーの駆除を計画。

●グァバは危険だった?!
日本では小笠原諸島で栽培される。テリハバンジロウの名前で要注意外来生物に指定。
・藪を形成し、単一優占種化し、在来の固有生物の成長を阻害。
・耐陰性、耐乾性、耐塩性があり、台風にも強い。
・種子が動物散布型だが、多様な動物が実を食べるため簡単にばらまかれる。
バンジロウが優占している林では、自然林構成種の侵入がほとんど見られない。

●再生可能エネルギーによる発電が生物多様性に与える影響
風力発電
・バードストライク。
希少種の事故死が多く見られ、少数でも影響は大きくなる。
・移動阻害
風力発電設備を避けるために飛行経路を変更

●北海道にカブトムシはいなかった・・・!?
北海道にもともとカブトムシはいなかった。
1936年以降定着し、ほぼ全域で生息する国内外来種。
・道内カブトムシ養殖場からの逃げ出し
・販売業者の大量投棄
・飼育していた成虫を逃がしてしまうまたは成虫の死後卵に気付かずに土を捨ててしまう
→メロンやスイカへの食害、在来種のクワガタムシ等の競争排除
北海道の外来種リスト(ブルーリスト)で「防除対策の必要性について検討する外来種」に位置付けられている

●放射能汚染が生物へ及ぼす影響
チェルノブイリ原発事故の10km圏の森は「赤い森」と呼ばれる。マツが枯死し、枯れた松林が赤茶けていたことに由来。
「赤い森」は、以前より生態系が豊かになり、多くの絶滅危惧種が生息する「奇跡の森」となっている。
放射性物質の影響は生物種ごとに異なる。

●ダムと自然
沖縄の辺野喜ダム建設で、オリヅルスミレは野生では絶滅。

●消えていくキリン
2016年12月、IUCNによって、キリンが絶滅危惧種としてレッドリストに加えられた。
タンザニアで、キリンを食べるとHIVやAIDSの治癒に役立つという噂が流れ、密猟が増加。
戦乱に見舞われたエチオピアでは食糧に。

●間違った知識によって乱獲されるサイ
ベトナムでサイの角が「ガンに効く」と言われ、密猟が増加。闇市場で高値で取引されている。

●辰野の移入ホタル
1960年代、「ホタルの名所」としての観光目的で、膨大な数のゲンジボタルが繰り返し放流
→移入種由来の遺伝子をもつゲンジボタルに入れ替わってしまった
→在来ゲンジボタルと移入ゲンジボタルを区別して保護する必要性