2017年1月7日
日本生物教育学会
記念講演「絶滅した生物"首長竜"」
佐藤たまき(東京学芸大学 教育学部 准教授 )
メモ
⚫︎現在の海にはどんな爬虫類がいるか?
カメ、ウミヘビ、ウミイグアナ、イリエワニ
※ワニは大部分は川など淡水にいるが、イリエワニなどは必要があれば海を泳ぐこともできる。
※ずっと海の中にいるのは、ウミヘビの一部だけ。水中で出産する。ウミガメは出産のために上陸する
※その他のウミヘビとウミイグアナは陸にいる時間が長く、用があるときだけ海に入る。
⚫︎現在の海にはどんな哺乳類がいるか?
イルカ、クジラ、アザラシ、トド、オットセイ、ラッコ、 ジュゴン、マナティetc...
爬虫類よりも哺乳類の方が色々なものがいる。
⚫︎中生代の海の動物
多様な大型の爬虫類がいた。
首長竜、魚竜、モササウルス類など
その他に、サメ、硬骨魚類、アンモナイト、二枚貝など
⚫︎「恐竜」という語の示すもの
おなじみの言葉でも、人によって意味が異なる。
非専門家:大昔の大きな動物(特に爬虫類)
昔の専門家:鳥盤類と竜盤類を足したものであるが、正式な分類群の名称ではない
現在の専門家:鳥盤類と竜盤類を含む分類群の正式な名称であり、系統学的に定義すると鳥類も含む。
※90年代後半に境目。
⚫︎最近の概念
研究の進展と系統分類学導入により、「恐竜」のコンセプト20世紀後半に激変
系統分類学:1960年代に提唱された分類法で、見た目の類似性よりも進化の道筋を重視。
分類群=単系統群
側系統群を認める伝統的な分類学と衝突しがち
※研究の進展よりも、系統分類学のインパクトが大きかった。
恐竜類は正式な分類群の名称
竜盤類と鳥盤類は近縁(姉妹群)であり、単系統群を形成するから。
ランク(こう、目など)は特に指定しないことが多い。
あえてつけるなら恐竜上目
鳥類も恐竜類に含まれる。
系統学的な定義
鳥盤類と竜盤類の最も最近の共通祖先と、その子孫全てを含む単系統群
「スズメとトリケラトプスの最も最近の・・・」など同義
鳥以外は「非鳥類型恐竜」(分類群ではない)
⚫︎首が短い首長竜もいる
実は、首の長さはバラバラ、色んな種類のものがいる。
トカゲやワニに近い、といことでその総称から、プレシオサウルスという名前がついた。「首が長い」という意味はない。
⚫︎海生爬虫類からわかること
陸から水への進出は何回も起きた。
いろいろな系統、いろいろな時期
絶滅もバラバラ
⚫︎フタバスズキリュウ
白亜紀がフタバスズキリュウの時代
1968年に化石発見
発掘、クリーニング
2006年、新種としての記載論文
時間がかかった。
日本の新聞やNatureでもニュースとして取り上げられた。
⚫︎記載論文の科学的な意義
分類学的な根拠が示された。
※自分が勝手に新種だと思っているわけではない、ということが示される。
基本的な情報が出版・公表された。
※いちいち、日本に来てもとの化石を見る必要がなく、ほとんどの情報を得ることができる。
⚫︎質疑応答
※恐竜を研究したい高校生へのオススメは?
→日本では大学で勉強するのは難しい。
現実的には、地学に進んで、そこで生物を対象にするのがよいのでは?
専門にするなら、学部で何をやってるかではあまり差がつかない。
理学部で地学があるところに行っておけばとりあえず良い。
※首長竜の鰭の指骨が多いのはなぜ?
海にすむ生物ではけっこう起きること。
細長い方が抵抗を減らすことができる。
※首の短い首長竜の頚椎の数は同じなのか?
骨の数が全然違う。
12個から70個以上まで。
爬虫類ではけっこう違ってくる。
原始的なやつは40個くらい。
そこから長いやつとか 短いやつがでてきた。
2017年1月8日
生物教育学会
公開シンポジウム「生物教育における深い学びとは?〜小中高をつないで「探求」の在り方を考える〜」
メモ
★は雑感
【藤枝先生】
次期学習指導要領についての答申(中教審第197号)
平成28年12月21日
「深い学び」に答えはない。
それぞれの教員がその視点を持って考え続けることが大事。
★「深い学びとは何か?」という問いに対して、自分の頭で考えた「納得解」が持てるかどうかが重要だろう。
【福田先生】
オーダーメイド教育、生涯学習のための『探求』
⚫︎大学や大学院では、研究をもって教育とする
これまでに知られていない疑問の解答をみつける。
これを繰り返す。
⚫︎研究は「主体的・対話的で深い学び」そのものである。
小学校から大学院まで、研究をもって教育とする。
みんなで頑張ろう。
以上、終了。
でもよいのだけれど・・・もう少し話題提供。
⚫︎楽しいから教育、楽しいから自分で学びたくなる
院生に聞くと、3年生までの授業と研究室での研究とどっちが楽しいか?
→圧倒的に「研究」
単位のための勉強ではなく、「楽しい」ことが大事。
達成感があるから楽しい。
★「楽しい」ことは重要。
授業も、教員にとって「苦行」だったら、生徒も楽しくない。
教員も楽しんでいいし、生徒にも楽しんでもらえばいい。
⚫︎どうやったら一番達成感を感じてもらえるか?
自分で楽にできるところのすこし上にチャレンジしてできるようになる。
全員共通のゴールを設定するのではない。
これができるのが「探求」のいいところ。
★この発想、ものすごく重要。
⚫︎探求の素過程
でも、探求のサイクル可逆的。実際の研究はそんなことの繰り返し。
※サイクルを回すことこだわらなくてもよい。
★「サイクルを回す」ことは、ある目的に対しての手段。「サイクルを回さない」ということも、別な目的では効果的な手段になりうる。
●観察から疑問をもつの一番難しい。
そこをどうしていくかが大問題。
⚫︎観察から疑問を引き出す
ニワトリの13日胚
これを見て色々考えてごらん。
自分の体と比較してごらん。
または、マウスの15日胚と比較する。
「比較」はすごくいい。
⚫︎比較観察から課題を解かせ、観察力をあげる
ニワトリ胚の観察後、胚を発生順に並べる。
その根拠を述べる。
どうしてそれが心臓だと思ったの?
こうして、いちいち根拠を求めると、よく観察するようになる。
この経験があると、スケッチが改善する。
⚫︎観察力
ある班では、心臓を流れる液体の色の変化に着目。
何が色を変えるのか。
赤血球の数の変化に違いない。
ある発生段階で急に増えるなんで。
・・・
別の班では、眼胞の形の変化に注目
でも、解析的な疑問にできない。
もう少し観察するように提案。
研究は失敗したが、彼らなりの達成感がある。
★これもものすごく重要。教員から見たら拙くても、自分たちが達成感があることの方が重要だろう。
課題研究は誰にとって何の目的で実施されるか?
⚫︎発表会
質問をする方がトレーニングされる
わからなかったこと
もっと知りたいこと
こうした方がいいこと
★たった3つの項目を示しておくだけ、というのはすごくいい。
⚫︎研究をもって教育とするには先生の力が大きい
オーダーメイドが可能
自分で達成感を自覚できる
だから楽しい
主体的に学ぶ、生涯学ぶに通じる
※教員の力が大事
特に生物は先端研究と高校生物が近い。
【白石先生】
2年必修選択 生物基礎(探求)の試み〜生物教育で何を身につけるべきなのか〜
進路多様校での実践
⚫︎2年必修選択生物基礎クラス
文化祭で一人一枚のポスターをつくる、という実践
⚫︎ポスタータイトルと採点
教員の採点を公表し、自己評価との違いを確認させ考えさせる。
⚫︎無意識の前提(仮定)を問う
ゴキブリは1ヶ月間、髪の毛一本で生きられるのか?
そもそもゴキブリの寿命は1ヶ月以上であることを前提としていないか。
⚫︎何の疑問もでてこない生徒には?
「追試」ということもある。
それでもよい。
★「追試」でもよい、は現状の指導に入れていなかった。来年度の参考に。
【手代木先生】
⚫︎研究仮説
学びに向かう力を重視。
それが伸びれば、知識・技能、思考力・判断力・表現力も伸びる
⚫︎自ら問題を発見する子
子供の思考に沿った事象提示と評価
既習概念を把握するためのコンセプトマップ
⚫︎スケッチ
「よーく見て描きましょう」とよく指示する。
絵を上手に描く、丁寧に、色を上手に、きれいに
絵が上手な子が評価され、本当によく見ている子が評価されないことになりかねない。
実際には、子どもたちは見ている。
そして、説明もできる。
でも、描画力が追いつかない。
「言葉のスケッチ」をさせると、よく見るようになる。
スケッチもものすごく改善する。
★「言葉のスケッチ」、すごく重要。
⚫︎教科書分析
生物に関係する問いは、「適用」のものが多い。
★習ったことを確かめることが主では、探究的な力はつかない。
⚫︎ツルレイシを秋にまいても花が咲くか。
興味をもって観察し、よく考える。
でも、教員がそれを適切に見取り、評価できるか?
→観察の視点リストを作成し、すべての教員で共有している。
★初期段階のハードルを下げる方法として、リスト化して共有は有効かもしれない。
【鎌田先生】
育成可能な資質・能力とは何か?
東京学芸大学の教科教育を専門にする23名の教員にアンケート
→7つのスキルと8つの態度を抽出。
→小学校500名、中学校400名の教員対象のアンケート調査を実施
⚫︎スキル
理科では、批判的思考力等は育成できる。
でも、感性などは育成しにくい。
教科ごとに傾向がある。
⚫︎態度
人間性については、理科はあまりでてこない
好奇心は少し高く出るが、他は低い。
道徳なんかは高い。
【パネルディスカッション】
●(白石)生徒が「難しい」と言ってきたとき、投げずに何かを考えているのだろう、と思う。
●(福田) 「勝手にやり出す」という段階に入ると、きたなと思う。
でも、大学では起きないことも多い。
就職してから変わるもいる。
高校だけで何とかしようとしなくていい。
★この言葉、教員は救われる。
⚫︎(白石)結局、本人が興味を持たないと進まない。
一学期、二学期ずっと活動できなかった生徒もいる。
でも、ゼリーの実験などで、「楽しい、やってみたい」と言ってきた。
時間がかかっても、待ったほうがいいこともある。
★当たり前だけれど、忘れがちなこと。
⚫︎(手代木)深い学びの評価は、ノートの記述がもっともわかりやすいだろう。
何を見とるのか、を考える必要あり。
⚫︎(福田)解析的な疑問でない疑問もたくさん出る。
なぜ頭が大きいのか?
でも、それは実験できない。
実験できるようにするために、数値化してみるとか。
実験可能な疑問に変換する。
その疑問自体がダメなのではなく、実験ができないというだけ。
これこれをやったら何が起きるか?はダメ。
これこれを調べるためにこれをする、にする。
予備実験的には前者でもよいだろう。
比較して、相違点と共通点を見出す訓練をする。
比較するとはどういうことかを学ぶ必要。
●(福田)教育困難校でも、ものを見せると、ものすごく活発になる。
色々やる。
これすごいよ!見てごらん!
手であっためたら心臓動いた!
誰かに評価してほしい。
★初期段階では「外発的動機づけ」も有効。むしろ、うまく使っていってよい。
●(福田)知識をどう身につける
ある時期に詰め込みはあっていいが、探求が先だろう。
名前を決めることの意義を、議論から感じさせる。
名前がついている方が議論しやすい。
なぜそこに名称が必要なのか?
なぜその知識が必要なのか?
★「探究→詰め込み」は教員のパラダイムシフトが必要。従来の感覚では「詰め込み→探究」になるだろう。
●(福田)教科書は、内容を減らしてほしい。
コーディンとかノギンとか、言葉ばかり伝えて、その意義を伝えていない。
⚫︎(藤枝)是非、中教審の答申を読んでほしい。
全体的なところは「概要」で。
29ページ。
大枠は13ページしかない。
これから何をねらっていくのか、凝縮して書いてある。
まず、ここを読んでほしい。
そこから必要に応じて関連資料を読んでほしい。
●(藤枝)評価について
3観点になる。
知識・技能
思考力・判断力・表現力
主体的に学習に取り組む態度
※「人間性」ではない。観点別評価に馴染むものと馴染まないものがある。
●パフォーマンス課題
内山先生(都立淵江高校)
診断的評価と形成的評価を活用
「粘り気があるお米は何か薬を混ぜているのでは?」これに対しての説明をするリフレットを作成する課題。
みんなちがってみんないい(ヒト編)
遺伝子検査について高校生にわかりやすく解説するVTR作成の課題。
解説者(専門家)と相談者を1名以上設定し、対談形式にする。
●iMotion
村松先生(星美学園中学高校)
タイムラプスなど、様々な機能を使える。
●アンモニアの濃度測定
西川先生(茂原北高校)
この発表をされた先生は、色々なことをされているようです。
http://nishikawaphd.blog39.fc2.com/
世の中、すごい人がたくさんいます。
●不思議の国のアリ巣
岡崎さん(三重大学大学院)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009631108
●カイコの水麻酔
森本先生(奈良教育大学)
http://mailsrv.nara-edu.ac.jp/~morimoto/com242.pdf
●ミラクルフルーツ
佐藤先生(成蹊中学高校)
味覚修飾物質。
他にもストロジン、水が甘くなるetc...
http://www.taste-m.com/definision.htm
進化的な意義は?
食べてもらいたいけれど、ショ糖を増やすのはエネルギー的にマイナス
サルが、「これを食べると他のものも美味しくなる」ことを学習してくれる。
西アフリカや東南アジアなど、サルが多い地域に味覚修飾をする植物が多い。
●伊豆大島課題研究
市石先生(都立国分寺高校)
課題研究のテーマ設定、問いを深めるプロセス
●埼玉県教材生物研究会
「生物課題実験マニュアル」素晴らしいです!
http://cxh01062.web.fc2.com/
●テオシント
西郷先生(生物教育研究所)
トウモロコシの原種。
1万年で、たった5つしか遺伝子変異していないらしい(!)
●解剖立体モデル
後藤先生(三重大学)
魚、イカ
解剖前のイメージつくり
●魚の半規管
福本先生(広島県立国泰寺高校)
すごくきれいな半規管が見えました!感動!
●アリの観察
吉澤先生(立教大学)
https://ari-labo.jimdo.com/
アミメアリ、同定できました!
「どこにでもいるアリ5人組」、是非校内で探してみます!