授業見学者のメモより

9月に授業見学に来ていただいた方からいただいた授業見学メモを許可をいただいた上で共有いたします。
★は疑問に対するコメントです。


①見学の目的
アクティブラーニング授業の雰囲気や生徒の様子を知り、イメージをつかむため。


②見学の疑問点、ツッコミなど
・NHK高校生物講座を見せていたが、あれは出演している大野先生だから可能なのではないか。
★それぞれの「want」と「can」が違うので、それをそれぞれが大切にして実践できればよいのだと思います。
僕は、「誰にでもできる実践」を目指しているのではなく、「目指しているものに対して今の自分ができる実践」をしています。
見学いただいた方には、そこから「思考の材料」を持って帰っていただければと思っています。


・配布プリントの設問の下の解答スペースがせまくないか。
★メモを取ることができることを前提に作成していません。
 授業アンケートでもたまにそのような意見がありますが、ほとんどの生徒は自分なりに解決を図っているようです。
「全員にフィットするデザイン」もないと思うので、まずはやってみて、生徒の反応を見ながら変えていくという方法でよいのではないかと思います。


・設問内容が生物基礎の範囲を超えているものもあったが、いいのだろうか。
★学習指導要領上は問題ありません。例えば、転写・翻訳を遺伝暗号表なしで扱うことに抵抗感があります。
単に発展的な内容を先取り学習すればよいということではなく、より本質に迫るにはどのような内容が必要か、ということも考えて内容を構成しています。


③参考になったこと
・あらかじめ教科書・図説・問題集を生徒に準備させたり、スマホ使用を許可させることで、自分で調べて進めることができる環境が整っていると思いました。
・レフレクションシートを毎回提出させることで、生徒の理解度や疑問点を教師側が把握するとともに、生徒自身が自分の理解度やこれまでの学習状況を把握できると思いました。


④その他の意見・感想
・生徒自身の「自分で考えて答えを出したい」「わかりたい」というモチベーションが感じられました。もし自分の授業でこの授業形式を導入すると、現状では「正解を教えてほしい。それを暗記してテストでいい点を取りたい」という態度の生徒たちの意識を、どのように変革させることができるのか考えないといけないと思いました。

 

別な方のメモです。

 

①見学の目的
主体的な学習の取り組み(アクティブラーニング)について実際の授業を見学し、手法を学ぶ。


②見学後の疑問点、ツッコミ等
本校の場合、1年生の後期には科目選択があり、学年の大半が化学・物理選択となり、生物を捨てる生徒が多い…アクティブラーニングが持続できるかが不安。
国立高校ではどうなのか。
★1年生の段階では、まだ「受験」を意識するような段階ではありませんし、あまりそのような「損得勘定」で授業を取捨選択しているようには感じません。
3年生でも4月の最初から「受験で使わない」ことが分かっている生徒もいたりします。
そのような生徒には、「受験で使わない人は、膨大な暗記や受験テクニックにとらわれずに、自由に学び、自由に考えることができるのだから、最高のトレーニング、最高の経験の場になる」ということを伝えています。
基本的には受験レベルの「損得」より、もっと大きなスケールでの「トレーニング」を意識できるとよいと思います。


③参考になったこと
3年生の授業ではグループごとに進度が違っていたが、みんな真剣に取り組んでいた。入試過去問を解くような授業はしないことにも驚いた。
プリントやノート等の点検もしないことに驚いた。
実際に見学して、先生ともお話をして、何が授業の本質であるかに気付かされた。
生徒にどんな力を身に付けさせたいのかを考え、そのための環境づくりが大事。


④その他のご意見・ご感想
・講義を入れる場合、どこまで講義を行うか。(しゃべりすぎてもいけないと思うが。)どれくらいの頻度で講義を入れるか。(生徒の進度が異なる場合、タイミングも大事だと思う)
★「目的」に応じて、「生徒の実態」に合わせながらでよいと思います。
例えば、今の理系生物のクラスであれば、「教科書の内容理解のための講義」は多くの生徒にとって邪魔になってしまいます。
一方で、発展的な疑問や話題についてであれば、情報共有して刺激することも意味があると思います。
ただし、これも長くなると邪魔になることもあります。
もし、内容理解に関して、自分たちだけで進めることに強い不安があるのであれば講義を入れてから活動の時間をとってあげることも考えられます。
講義を入れる目的としては、まずは「安心感」をもってもらうことが重要だと考えます。

 

千葉県立佐原高校の石毛先生よりいただいた授業見学メモです。


①見学の目的
・自分が専門とする地理と「類似」した科目として、ALがどのように展開されているのか知りたかった。
・学校としてのALの取り組みや展開に興味があった。


②見学後の疑問点、ツッコミ等
・「白地」にまとめるというとても高度な取り組みに、どれくらいの生徒がついていけるのか興味がわいた。
・各自に任せられたペースを進行管理する難しさを感じた。


③参考になったこと
・ALというやり方「でも」、大切なのは教科内容や親学問を深く広く理解することだと実感した。


④その他のご意見・ご感想
・生徒にとって「安心できる場所」を作る機会は、4月の授業開き、授業者の日頃の姿勢などが想像できますが、先生はどのようにされていますか?
★授業開きについて
「4月の授業開き」では、スライドを使用して語りを入れています。
詳しい資料は、以下のページの「オリエンテーション」のファイルをご覧ください。
http://biologymanabiai.jimdo.com/授業プリント-研修会記録/生物基礎-2016/
ただし、しっかりとした語りをするのは、4月の授業開きと、定期考査返却のタイミングのみなので、年間で5回です。
それ以外の授業では、特に語りは入れず「体験」を重視しています。
★授業者の日頃の姿勢
一番意識していることは、「否定しない」ということです。
私語や、授業と関係のないことをしていると、強い口調で注意して授業規律を維持したくなりますが、
そうではなく、まずは「信頼する」ことが大事だと思っています。
ですから、「何やってるんだ!」ではなく、「生物の授業だぞー、がんばろー」くらいの声掛けになります。
あと、よく話題になるのは「失敗」に対して寛容になる、もっと言えば失敗を推奨する、ということです。


・多くの地方の進学校にみられるように、学力差が相当に広い生徒集団の場合には、大野先生の授業内容・展開はどのように変わりますか?(変わりませんか?)
★学力差が広い場合には、その学力差を活用して「学び合い」が活性化できるような授業が展開できないかと考えます。
生徒の実態に応じてグループ分けなどは考えますが、基本的に「学力で分ける」というようなことはしない方がよいと思っています。
例えば、授業の内容の理解が速い生徒は、理解が遅い生徒と一緒に学ぶことで得られるものは少ないように思えますが、実際には「説明する」ことで理解が深まりますし、何より他者に貢献することで喜びを感じることができます。
それは双方にとって「誰もが生きやすい社会」への一歩なのだろうと思います。
ただし、実際にはやってみないとわかりませんし、状況を見ながら柔軟に変容していくことが、「机上の空論」よりも重要だと思います。