「一体感」が会社を潰す 読書メモ

『「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体』(2014 秋山進 PHPビジネス新書)
 読書メモ


【「個人がコドモ?」の組織】
●誰が当事者?批評家ばかりの組織
相手を批判しながらも、問題点を論理的、かつ明確に洗い出して相手を追い詰めることもない(自分の非を明らかにしないため)。
既決感が強く、効力感が得られない組織では当事者意識をもつことは難しい。


●「空気」に支配されている人たちの組織
「会社の業績」「所属する部門の業績」と「個人のモチベーション」には強い相関関係がある。
今まさに何かが決定されてしまいそうな雰囲気でも、専門的な知見や立場から「おかしい」と思えば言わなかればならないはず。


●「稼ぐ」ことを忘れた人たちの組織
商品化を遅らせて研究開発を続けようとする研究開発者。
業務に使わない資格をとる資格マニア。


●仲間としか仕事をしない人たちの組織
自分たちの仲間意識と成功パターンを大事にしてしまうと、いつのまにか排他的になり、多様性を失い、環境変化に取り残される。


●忠誠心の表明を要求する上司がいる組織
人間は感情の動物であり、それ相応の感情的な配慮は必要だが、グループ維持のための過剰な努力は組織の将来につながらない。


【「組織文化がコドモ?」の組織】
●全体最適より個別最適を優先する組織
関連する事業部門が対立し、限りある経営資源を奪い合う戦いにより、競合相手に塩を送りかねない状況に。
尽くすべき対象が、会社や国ではなく、事業部門や省庁へと矮小化していってしまう。


●必要以上に摩擦を回避する組織
摩擦をうまく回避できる人が、調整能力の高い、よきリーダーとして尊ばれるが、それは違うはず。
会議は、さまざまな立場の人が集まり、対立したり協調したりしながらより優れた案をつくり出し、最終的には一つの結論を導き出すとともに、それぞれの役割分担を決める場。
必要以上に摩擦を回避すると、一つの結論を導きだすこともないし、何が決まったのかもハッキリしない。
都合の悪いことは棚上げ、先送りで、誰も責任を問われないし、痛みも感じないが、みんなで沈む。
摩擦は組織の問題を明らかにし、摩擦を避けようとすると問題は隠される。


●よその部署の情報が流れてこない組織
セクショナリズムによる「メンタルバリアー」により、自分たちの内内の情報を外にベラベラ話す人は例外なく嫌われる。


●例外対応ができない組織
精緻に設計されたルールは変更が大変なために、状況の変化に合わせて柔軟に変えることができず失敗する。
「きちんとルールを守る」「何か困ったことがあったら、ルールに従って行い、自分で勝手に判断しない」というのは現実的ではない。


●議論のための議論で満足する組織
アリバイづくりのための会議がある。
結論は決まっているが、会議を何回も開いて多くの人の意見を集める。
すぐに結論を出すと仕事をしていないように思われるので、いかにも時間をかけて検討した結果であるというための会議。
しかし、会議は成果を出すために行うものなので、目的があり、ステークホルダーがその目的に合致した範囲で議論を行い、一つの結論を出し、その決定事項にそって実際に行動するための役割分担とスケジュールを決めるもの。


【「マネジメントがコドモ?」の組織】
●実現不可能な目標が設定される組織
ストレッチ目標のストレッチ度合いを間違うと、誰にとっても仕事がしづらい環境がつくられてしまう。
経営者は夢を語るが、夢に到達するまでの戦略や戦術も語れなくてはならない。


●権限と責任が不釣り合いな組織
権限は与えられず、責任だけとらされる組織にいるメリットはゼロ。
権限と責任が不釣り合いな組織では、成果を出すための情報収集ではなく、自己保身のために情報収集を行う。
権限と責任が不釣り合いな組織では、誰もリスクをとらないため、じり貧の組織になる。


●優先順位がつけられない組織
選択と集中ができない組織が多くある。


●反省しない、学習能力の低い組織
ビジネスプランと志は会社の両輪。
「たらい回し」で組織的に失敗をうやむやにする。


●一流が排除される組織
 誰かの地位を安泰にするために優秀な社員が排除されると、会社はリスクにさらされ続ける。
これまでの自分たちのやり方とは違った、先進的なやり方を中途採用者から学んで、みんなで共有して活用していけば、組織の力が底上げされる。


【コドモの組織から大人の組織へ】
●コドモの組織が強かった理由
経営者にとってコドモの組織のほうが運営しやすく、経済的にも長い期間、合理的だったから。
生産規模と効率が大事な高度成長期の時代は、同じ方向を向いて、同じときに、同じやり方で、同じことをするほうが効率的。
社内での摩擦や足の引っ張り合いをしているよりも、社員一丸となって事に当たったほうが大きな成果が出るので、仲間意識をできるだけ社員全員に広げ、社内対立を避けることになる。
現在は「多様性」が競争力の源泉だが、ひと昔前までは、逆に「同質性」こそが競争力の源泉だった。

●コドモの組織と大人の組織の対比
・組織の競争力の源泉
標準化力と同質性 → 専門技術力と異質性
・組織の紐帯
一体感、仲間意識 → ビジョン、目的、理念
・個人
一人前の技術者 → 一流の技術者
他社へのきづかい → 会社の目標と自分の目標の統合
・個人と組織の関係
所属 → 参加
・個人間の関係
摩擦回避 → 摩擦が発展の糧
・個人のモチベーション
社内的な地位、報酬、仲間ウチの楽しさ → 社会での地位、仕事のやりがい、技術の向上、お客さまの喜ぶ顔
・判断基軸
ルール、マニュアル → ビジョン、プリンシプル
・マネジャーの仕事
わが社のやり方の実践 → ビジョンの設定、戦略の立案
調整、根回し → 摩擦の建設的活用、決断
・マネジャーと個人との関係
管理監督 → 専門性の発揮と統合


●大人になるための二つの「ジリツ」
「自立」とは、経済的に自立する、つまり社会にとって価値ある人材として認められるだけの技術(スキル)を身に付けていること。
「自律」とは、仕事を進めていくうえで、自分なりの行動規範を定め、それに従うこと。
経済的に自立できるだけの技術をもっていて、自分で必要だと認識してつくりあげた規律を守れる人が大人。


●目的合理的な思考行動パターン
組織と個人が、お互いの目的や志向、やりたいことを明確にしてすり合わせ、その合意点を探っていくようになる。
目的と制約条件(どのくらいの予算、どのくらいの期間etc...)
制約が事前に提示されていないと、各人が自分の考える個別最適化を主張し合い、永遠に議論がかみ合わない。
制約条件の提示とともに、トレードオフに対しての優先順位の提示も重要(これはマネージャーの仕事)。


●マネジメントのプロ化
コドモの組織では、マネジャーの仕事はマネジメントではなく「わが社のやり方」に基づく調整や根回しだった。
大人の組織では、マネジャーは「マネジメント職」に就くことになる。
マネジメントのプロ化とは、専門家のもつ多様性を束ねて機能的に統合し、共通の目標を実現させる仕事。
プロのマネジャーは、アウトプットの問題点や改善点を一発で見抜く「眼力」と「質問力」をもつ。
ルール主義とプロセス制御は製造業にあっている。
大人の技術者による知的生産が求められる分野では、プリンシプル主義と結果制御にならざるをえない。
ルール主義とプロセス制御はラク。


●優れたチームの条件
1、判断力があり信頼できるブレないリーダーがいる
2、一芸に秀でたよいメンバーがそろっている
3、リーダーとメンバー、メンバー同士に強い信頼関係がある
4、自分が問題を解決するのだという強い当事者意識を全員がもっている
5、問題解決に向かう段階では、方針の違いが生まれて摩擦が起こるが、摩擦にめげない
6、必要なアイデアを素早く共有し、みなが率直に意見を言い合う
7、リーダーがあるべき価値基準に基づいて合理的に方針を決める
8、個々人が自分の持ち場で自分の特技を活かしてしっかりと成果を出す
9、ダメな場合は方針を変更して、新しいものを試す
10、最後までがんばるだけの達成意欲をみながもつている


【コドモの組織で大人になる戦略】
●一流になるための方法
時間の投入先を変える(「MUSTの会」には参加し、「WILLの会」は遠慮する)
「変わり者だけどいい人」と言われないと変人扱いされ排除されてしまう。
「一番出世」はあきらめる。
一流から「真似ぶ」。
行動規範をつくり守る。
アウェイで能力を磨く。
アウェイでは、足りない知識を増やし、新しいアイデアを生み出し、もとの会社では誰かほかの人がやってくれていたことも自分でやらなくてはならない。
その中で、自分の技術が向上し、伝えるパターンが増え、精神的にもタフになる。
独創性をつくる思考として、ものごとの本質を求めて深く掘り下げていく垂直思考と、より多様な領域の知恵を獲得して自らがすでにもっているものと融合をはかる水平思考の二つがある。
他者と異なるアウトプットを出すには、使う材料が違うか、加工方法が違うか、または両方が違うか。
材料の違いとは、使う知識の違い。
加工方法の違いとは、ゴールに向けての思考プロセスや行動パターンの違い。