不安を希望に変えるには

昨日のフジテレビの「知られざる脳の真実」という番組で、人間のエコーロケーションが取り上げられていました。
全盲の方が、「クリック音」を出し、その反射音を聞くことでどこにどのようなものがあるかを知るというものです。
ものの位置だけでなく、大きさやかたさなどもわかるようです。
番組では、その達人のホアンさんという方が、パラリンピック水泳金メダリストの秋山さんにエコロケーションを指南するという内容でした。
ホアンさんは、「この能力は特別なことではなく、練習すれば誰でもできるようになる」と語っていました。
実際に、秋山さんも、番組内で様々なトレーニングを受け、少しずつエコロケーションの可能性を体感しているようでした。


印象的だったのは、秋山さんの次の言葉でした。
”私は、いかに周囲のことに無関心だったかに気が付きました。
目の前にあるものも、よけられればいいだけで、それが何なのかはどうでもいいことでした。
でも、エコーロケーションを始めた人は、色々なことを見たい、知りたいと思った人なのだと思います。”


そして、VTRの最後では、「今一番行きたいところ」として、よみうりランドのバンジージャンプに秋山さんがホアンさんを連れていく場面がありました。
以前に来たときは、完全に友人の言う通りに進んでたどり着いた場所。
それを、今回は友人の手助けなしに、自分でたどり着こうとするというチャレンジ。
お店の人などに方向を聞きながら、練習したてのエコーローケーションも駆使して、無事にたどりつくことができました。
向かっている途中に、こんなナレーションがありました。


”手を引いてくれる人はいない。
ホアンに出会う前は不安だったことを今里奈さんは楽しんでいるように見えた。”


この一連の流れは、教育というものを考える上で本質的なことだと思いました。
エコーロケーションとの出会いにより、秋山さんは、「先の見えない不安」を「これから世界をもっと知っていけるかもしれないワクワク感」にしたのだと思います。
世界の感じ方が一変し、自分の人生に大きな目標や希望を持てたのだと思います。
高校生にも、どんな形でもいいし、どんな事柄でもいいけれど、似たような感覚を持ってほしいし、そのための「場」が学校に必要なのだろうと思いました。


ある人が抱く「不安」とは何か。
ある人が日常の中で「見落としているもの」は何か。
ある人がその不安を「ワクワク感」に変えられるとすれば、どんな場が必要なのか。
ある人が見落としているものに気が付き、「世界がより魅力的なものに見える」ようにするには、どんな場が必要なのか。


秋山さんは、ホアンさんのスキルだけではなく「在り方」から多くを感じ、人生の希望を見出したのだと思います。
「希望を持てる」ってすごいことですし、教育の現場はそれを志向したものであってほしいと思います。
「明日からの自分に感じる可能性」があれば、それは人生を豊かにするのでしょう。
僕自身も、「明日からの自分に感じる可能性」がありますし、今日より明日は少しでも成長したいと思っています。
それは、様々な「場」で、様々な人との出会いがあり、僕なりの「エコーロケーション」と出会うことができたからだと思っています。
生徒それぞれにとっての「エコーロケーション」は異なるでしょう。
でも、きっとそれぞれにそれは「ある」のだと思います。
それぞれの「エコーロケーション」を見つけてもらえるには何が必要か。
常に考えたい問です。