東大吹奏楽部とUCバークレーの合同演奏会で感じた事

東京大学吹奏楽部と、UCバークレーのマーチングバンドとの交流演奏会、終了しました。
合同ステージは、酒井格さんの「たなばた」。
少しだけ公開合同リハがあり、本番。
リハの途中から、涙が込み上げてきてしまい、堪えられませんでした。
こんなに泣いたのはいつ以来か、もう記憶がないくらいです。
演奏の素晴らしさもそうですが、時間も空間も超えた、色々な人の「想い」が集まって実現した奇跡のステージ、その存在そのものに心を強く揺さぶられました。


楠山先生と綿引さんの存在を強く感じました。
色んなことを思い出しすぎて、涙が止まりませんでした。


また楠山先生の指揮で、あの時のメンバーで、ほんの5分だけでもいいから、もう一度演奏したい。
そんな、願ってもどうしようもないことが、心を占めていました。
でも、それは決して後ろ向きな感情ではなく、「頑張って生きていこう」という気持ちにつながるもので、僕は、二人から叱咤激励されているようで、1日1日を大切に生きようと自然に、そして強く思いました。
今の僕を「つくって」くれた大切な二人の人に感謝の気持ちが込み上げてきます。


こういう感情と出会えたのも、今日の演奏会があったからです。
本当に、感謝です。


今でも覚えています。
2003年3月、東京大学吹奏楽部のアメリカ演奏旅行。
いくつもの会場で演奏しましたが、特にバークレーでのコンサートは、僕の音楽人生でも唯一無二の体験でした。
演奏中に「音楽の神様」と会うことができたと思えた、唯一無二のコンサートです。
この日ほど音楽をやっていて幸せだと感じた日はなかったというくらい、本当に素晴らしい日でした(その後、ニューヨークのカーネギーホールでも演奏させていただきましたが、バークレーでの音楽体験はそれに比べても特別なものでした)。


今日の演奏会で、バークレーの指揮者であるカロニコさんが、こんな話をされました。
その日の夜、カロニコさんが、楠山先生に声をかけ、夜の街に二人で繰り出したそうです。
カロニコさんは、おもてなしをしようと思い、「寿司とか酒がいいですか?」と聞いてみますが、楠山先生は、「寿司はもうたくさん。フィッシュアンドチップス!」と返されたそうです。
何とも楠山先生らしいエピソードです。


その後の食事とお酒の席で、カロニコさんは楠山先生に「『たなばた』は素晴らしかった」と伝えたそうです。
すると、楠山先生は、「じゃあ、これを是非もらって欲しい」と、たなばたのスコアを手渡したそうです。


あの夜の演奏で、「たなばた」が人の心を震わせたこと、そして、楠山先生が、自身の想いを楽譜に託していたこと。
今日のカロニコさんのお話で初めて知りました。


バークレーのマーチングバンドが、30数年ぶりの海外ツアーとしてアジアツアーをすることになりました。
このタイミングで、2003年の交流の記憶が、再び二つのバンドを引き合わせました。
それを引き合わせたのは、楠山先生の想いです。
カロニコさんは、合同演奏の曲に「たなばた」を選びました。


こうして、奇跡のステージが実現したのです。
この話を聞きながら、もう何と言ったらいいかわからない状態になってしまいました。
人の「想い」は、国境も、時間も、空間も越えて何かを伝える力がある。
それを楠山先生が、お亡くなりになった後に、僕たちに教えてくれました。


僕なんかが教員をやっていても、「想い」を持って、それを伝えようと、一生懸命生きていれば、少しくらいは何かを伝えられるかもしれません。
そんな勇気や希望をいただいたような気持ちです。

この演奏会に来ることができなかった多くの「なかま」に、少しでも伝われば幸いです。