変わるもの、変わらないもの

東京大学吹奏楽部の定期演奏会に行ってきました。
今年は、どうしても行きたい理由がありました。


長年にわたって常任指揮者を務めていただいた楠山先生が今年お亡くなりになりました。
このところ体調を崩されていましたが、この数年はアンコールの「そりすべり」だけは指揮をされていたそうです。
そして、今年も、お亡くなりになる直前まで、東大吹奏楽部の定期演奏会で指揮を振るということにこだわっていらしたそうです。
その想いの深さに胸が痛みます。
楠山先生がどうしてももう一度立ちたかった舞台。
それをどうしても見ておきたかったのです。


定期演奏会のパンフレットには、いつもあった「常任指揮者 楠山光彦」の記載はなくなっていました。
また、追悼の言葉のような記載も見つけることができず、少しだけ寂しい気持ちになりました。


指揮者は、まだ20代の溌剌とした若い方でした。
エネルギッシュな指揮で演奏に推進力を与えていました。


二部のポップスステージは、セクションリーダーの部員が指揮を振っていました。
学指揮は駒場祭だけ、というのも単なる固定観念で、その都度色々考えて試してみるというのも良いなぁと思いました。
選曲も個性的で楽しませてもらいました。


休憩中にパンフレットの名簿を見ました。
約120名の部員のうち、東大生は4分の1ほどになっていました。
20以上の大学から構成されているそうです。
時代は変わるのだなぁと感じました。


3部は、メインの一曲のみ。
3部冒頭の「胸にコサージュをつけているのが卒部生でございます」の司会アナウンスも懐かしく耳に響きました。
演奏は、メインにふさわしい熱演。
演奏後、部責任者の3年生が挨拶をしました。
部の歩みの紹介と、今日で引退する卒部生の紹介。
卒部生がステージ前方に整列し、スポットライトが当たります。
紹介も終わり、それぞれの位置へと戻っていきます。


そして・・・


部責の方が、もう一つお話したいことがあります、と切り出しました。
そして、楠山先生のことを話し始めたのです。
ここ数年はアンコールのそりすべりだけを振ってくれていたエピソードなども紹介していました。
胸が詰まります。
そして、アンコールのそりすべりで、楠山先生の奥様がピアノを弾くと、彼は言いました。
なぜか、想いが込み上げてしまいました。


アンコール1曲目の演奏の美しさもあって、ただ胸がいっぱいでした。
そして、そりすべり。
10年以上前、僕自身もツリーの衣装を着て、アンコールで踊りました。
今日のそりすべりも、あの時と同じ衣装で部員が踊っていました。
振り付けも、あの頃とほぼ同じ。
違うのは、そこに楠山先生がいないことと、楠山先生の奥様がいること。
2階席の僕のところまで「小雪隊」がやってきて、お菓子をくれました。
最後のトナカイの鳴き声は、暖かいけれど、切ない響きに聞こえました。
楠山先生には、その声はきっと届いたことと思います。


今日一日で、「変わるもの」を、たくさん見て、そして感じました。
でも、「変わらないもの」の方が強く心に焼きつきました。
その一つは、「人のつながりを大切にする」ということです。
今の執行部は25。
楠山先生が元気に最初から最後まで指揮を振っていた姿など知る由もありません。
でも。
彼らは、楠山先生のことを大切に想ってくれていました。
その気持ちに触れることができて、それだけで今日あの場にいれて本当に良かったと思えます。


時代は変わります。
集団の成り立ちも変わりますし、それに伴って運営も変わります。
でも、いつまでも大切にしたい(してほしい)マインドがあります。


この演奏会は、国立高校の階段の踊り場に貼ってあったポスターで気づけました。
OBの方がいるのでしょうか。
東京大学吹奏楽部のポスターだけがそそで存在を主張していました。
駒場祭のポスターも貼ってあり、それを見つけた時には、驚きとともに、じんわりと喜びが湧いてきたものです。


そして、このポスターで、はっきりと定期演奏会の日程を記憶にとどめておくことができました。
貼ってくれた方に、そして不思議な運命に感謝いたします。


楽しい思い出ばかりではないですが、それでも今日は楠山先生と東京大学吹奏楽部での時間を振り返りながら眠りにつこうと思います。
楠山先生、素晴らしい時間を本当にありがとうございました。