哲学はなぜ重要か

2015年11月4日(水)
都立国立高校進路講演会メモ
山沢清人先生(信州大学前学長)

 

●スマホはなぜダメか
今から24、25才くらいまでの間で最も重要なのは、「しっかりものを考える」ということ
これを自分の力で行うことが重要。
人類が解決しなければならない問題は山積している。
環境、エネルギーetc...
それらの「答え」は検索しても出てこない。
スマホはいらないのではなく、これからますます重要になるだろう。
でも、まずやるのは「しっかりものを考える」こと。

 

●専門性と教養
フランスの大学院では、哲学の論文を書かされる。
「幸せとは何か」
「良き社会とは何か」
法学などの専門の内容は出来て当たり前。
それに+αで、哲学などもできているかどうか。
これは日本に足りない。

 

原発事故の後、ドイツでは「いかに安全にエネルギーを供給するか」ということを議論する倫理委員会をつくった。
「倫理」委員会というところがポイント。
哲学がベースにある。
この先、ドイツという国がどうあるべきかを哲学で議論する。
人類の持続可能性についてしっかりと責任がとれるかどうか、を考えた上で判断する。
その場でエネルギーが足りているか、というレベルではない。

コンピューターが使えて、英語ができて、というのが「高知識化社会」ではない。
こういう議論ができるかどうかが重要。

 

水の問題。
従来は土木工学だったが、信州大学では物性化学でアプローチしている。
研究の対象は、どんどん複合化している。
人類の継続性の問題を解決していくために、狭い専門性ではダメ。
専門以外の部分でも入り口だけでも教えておくことに意味はある。
また、「安全な水」は科学でつくれるけれど、「安心な水」はつくれない。それは人間の心が判断することだから。
そこを考えるためには教養が必要。

 

【感想等】
「教養」というものの重要性にフォーカスしていたよう感じる。
特に、「哲学」教育の重要性を訴えていた。
これに関連したサイト2つより、引用・抜粋。

フランスで最も重視される教養「哲学」~あなたはこの問題に答えられますか?
●フランスでは、哲学を学ばずして、大人の仲間入りをすることは出来ない、とまで言われている。
●高校の最終学年で学ぶのは哲学ではなく、哲学すること。
●哲学を学ぶことことで、人はより自由に思考できるようになり、また自由な思考こそが人間をより"自由な存在"にするとナポレオンは考えた。

 

【現地取材@パリ】思考の方向を定めるとはどういうことか―フランスの高校における哲学教育
"授業では、人物名や著作、概念やキーワードなど重要事項を暗記することではなく、何かを思考するための手段や基準、つまりは道具(オルガノン)を習得することが目指される。"
"思考の方向を定めるとはどういうことだろうか―今回の取材でもっとも印象に残ったのは、「思考するための基本的で的確な方法を学ぶ」という、哲学に課せられたもっとも単純な務めである。自由に思考することが重要なわけではない。自由に思考するためにいかなる制約や規則が必要なのかを自覚することが重要なのである。"

 

「思考の作法」としての哲学教育は、とても重要。
生物学教育の立場では、やはり生命倫理教育の充実を考えたい。
夏期講習での生命倫理の講座は、参加人数は多くなかったが、参加した生徒にとって意味ある時間になったように思う。
このような講座を、長期休業だけでなく不定期でも日常の中で開催していきたい。
それは、「教わる」ものではなく、「参加する」もの。
だからどうしても「場」が必要。
教員は、その「場」をつくり提供することだけでよいのだろう。

ディスカッションの際、スマホ等での情報検索が有効なこともあるだろう。
しかし、明確に「作業」と「思考」を区別し、「思考」を徹底するのであれば、スマホは必須ではないし、むしろスマホなしという制約があった方が「思考」は促進されるかもしれない。
「借り物の思考」ではなく、「自分で考え抜く」という態度と、他者の意見に耳を傾け、議論を生産的に発展させていく態度が肝要だろう。