探究活動は難しくない

長文なので、ここで言いたい内容をザックリまとめてみると・・・
●理科の探究活動は「完成」されすぎていて教員にも生徒にも敷居が高い。
●でも、日常にありふれている「興味」や「不思議」に気付けることが始まり。
●そこから、科学的プロセスを意識した思考までいければそれで十分探究活動である。
ということです。

 

「仮説→実験→結果の整理→考察→・・・」という基本サイクルの手前には、「観察→問題発見→」というプロセスがあるけれども、日本の理科教科書ではここが弱いように感じる、と以前に書きました。

また、先日の生物勉強会と情報交換会での奥津先生とのやり取りの中で、生態学の研究で進め方に大きく2種類あるという話も伺いました。

 

①証明したい仮説を予め持っていて、その仮説を支持するための調査等を考え、実施していく。
②最初から何かの仮説を持つわけでもなく、とりあえず調査して、そこから問題発見していく。

 

当然、この②からもいずれは仮説設定がされ、①のプロセスに入ることと思いますし、①も何の調査もなくいきなりというわけではなく、何らかの観察・調査が先行していることと思います。
しかし、高校生に対して伝えたいことは、②でいいのであるということです。
①はいかにも敷居が高く思えます。

 

そんなことを考えているときに、「所さんの目がテン!」で「食べ放題」を取り上げていました。
その最初のテーマが、「食べ放題にはどのようにして挑めばよいか?」でした。
実験としては、6人の男女を3グループに分け、昼を以下のようにして夜焼肉食べ放題でどのくらい食べられるかを調べる、というものでした。

 

A、ぶりの照り焼き定食(約650kcal)
B、豚かつ定食(約650kcal)
C、昼食抜き(お茶のみ)

 

素朴に、「できる限り空腹にして」と予想するならば、Cのグループが最も食べられるはずですが、結果は、B>A>Cとなりました。
予想に反する「意外」な結果が出てくることとなってしまいました。
そもそもの多くの視聴者の予想は、「たぶん昼食抜いた方が食べ放題とかいっぱい食べれるんじゃないか・・・?」程度のことだと思いますが、結果はその仮説に反してしまった。
「なんで豚かつを食べたときが一番食べれたの??これって本当??じゃあ、どういうこと??」


この混乱からの「次の一手」を打てるかどうかが重要なのだと思います。
つまり、この結果から、
●どのような問題を発見できるか。
●その問題に対してどのような仮説を立てることができるか。
●その仮説はどのような実験・調査を行えば検証できるか。
●結果から仮説を裏付けるためにどのような統計学的手法が使えるか(使う検定の種類は?)。
などを考えることができるかどうかということです。
番組では、この後すぐに専門家が「解説」をして、ある種の納得を視聴者に与えていましたが、果たしてその説明は「科学的に妥当なのか?」という思考もしてほしいのです。

 

これが、おそらく文科省が考えている「理科の探究活動」のイメージに近いものだと思います。
ちっとも難しいことではないのです。
こんなバラエティ番組を見ている(これが観察・調査にあたる)だけで、疑問を持つことができる。これが問題発見につながる。
そこから先は自由に発想していればいい。
可能であれば、考えた実験・調査を実行できればいい。
願わくば、思考した中身を誰かと共有し、語らうことができればいい。

 

教員は生徒にそんな世界を見せたり、場を設定したりすればいいのだと思います。
苫野一徳さんの「教育の力」を読み進めていますが、「プロジェクト型の学び」というのもすごく共感できました。
あまりやったことのない教員や生徒にとって「理科の探究活動」や「プロジェクト型の学び」のハードルは高すぎるように思えます。
しかし、全然そんなことはないのです。
それを端的に伝えられる「事例」がたくさん必要なのだと思います。
テレビを見て考えたこんなことですら、一つの事例になりえると思います。

 

教員も生徒も、構えず、自然体でいいと思います。
何かを見て、「おもしろい」とか、「不思議だな」とか思えることって世の中にあふれているんです。
ただ一つ必要なのは、アンテナを高く張って、そんな感覚に気付けること。
そして、そこから思考の翼を広げることだと思っています。

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